口寄せごっこ | ナノ


 焼肉Qの前で7人は解散した。ナルトはサクラに一緒に帰ろうと誘い、サイはそれを追って行った。いのとシカマルとチョウジの帰路は同じ方向なので、ナマエはみんなにまたねと言うと1人で帰路につくこととなった。

「おい、ナマエ。」

 1人で少し歩いていると、シカマルが後ろから追ってきた。あれ?と思いながらシカマルが追いつくのを待った。

「シカマルくんどうしたの?」

「俺もこっちに用があんだよ。」

「そうなんだ。」

 ナマエとシカマルは並んで歩き出した。しばらく、最近の木ノ葉隠れの里の情勢だとか、任務だとか他愛のない話をした。シカマルの話は的確で端的で、ナマエはシカマルと話すのが好きだった。さらにしばらく歩いていると、どんどん人気の少ないナマエの家のそばまで来ていた。内心、こちらにはもうみょうじ家かうちは一族の集落くらいしかないが何の用なのだろうと思っていた。

 一方でシカマルは、「ナマエの潔白を証明する証拠」を何か引き出せないかと考えていた。
 カカシにシカマルだけ病室で呼び止められたのには理由があった。





 ――数時間前。カカシの病室。
 
「シカマル、ちょっと。」

「?はい。」

「ナルトやサクラ、それにサイには頼めないからお前に頼むけど。」

「……なんすか。」

 シカマルは内心めんどくせーことじゃないといいなと思っていた。カカシが直々にシカマルへ頼み事をしてくるなんてそうあることではない。さらに直属の部下であるカカシ班の3人には頼めないことときた。面倒な臭いしかしない。

「ナマエのことなんだけど、俺が暗部を手配するまで監視してくれない?」

「は?ナマエを?」

 シカマルはカカシからまさかナマエの監視任務を言い渡されると思わず驚いた。

「端的に言うと、最近ナマエとサスケが接触した可能性がある。」

「ナマエとサスケが?」

 シカマルはアカデミー時代や下忍時代を思い出してみたが、ナマエとサスケが話しているところはおろか一緒にいるところを見た記憶はなかった。

「そ。ちょっと自信ないんだけど。尋問かけるには証拠もないし、今俺だけ動いてるんだけど協力してよ。今日の夕方まででいいから。」

「ナマエっていやさっきいた子か。シカマルが好きそうなおっとり系。」

 ベッド脇の小さな椅子に座ったアスマが茶化した。シカマルはアスマを睨みつけるだけで反論はしなかった。実のところ、アスマもカカシもナマエのことはあまり知らなかった。ナマエはシカマルが中忍になった時の中忍試験を受けていなかったことも大きい。

「いいっすけど……。」

「まあ同期を監視するなんてあんまり乗らないのはわかるけど、ナマエとサスケが無関係だってわかればいいから。軽く探ってみてよ。」

「っす。」





 ――さてどうすっかな。

 シカマルはナマエに気付かれないようにどうにかサスケのことを聞き出せないか考えていた。

「里外の任務とかは行ってるか。」

「うーん、先週火の国の国境近くまで行ったくらいかなあ。」

 ――サスケが火の国まで来てるわけねーし、サスケと会ってたら言うわけねーよな。

 本当に無関係でボロが出ないだけなのか、ナマエのここ最近の状況を聞いても、シカマルはそれらしい情報を得ることはできなかった。嘘を吐いているような素振りもない。

「じゃあ、わたしの家ここだから。」

「あ?ああ。お前んち遠いな。」

 ナマエの家までの長い道のりを2人で歩いたが、特に収穫はなかった。ナマエはシカマルの行先が少し気になったが詮索するのはやめておいた。

「里の外れだから。じゃあまたね、久しぶりにゆっくり話せて良かった。」

 なんの曇りもなくナマエは笑顔で手を振るので、シカマルは罪悪感に苛まれた。自分はナマエを疑って情報を引き出そうとしていたのに、ナマエは「シカマルとゆっくり話せて良かった」と言う。シカマルはそんな気持ちを隠して、じゃあと手を挙げて立ち去った。

 ナマエと別れたシカマルは、きっと何かの間違いなんだろうと思い始めていた。後は夕方、暗部が到着するまでナマエが家から出ないか見張っておけばいい。そう思い、何の気なしに視線を動かした先には、ひっそりとした隣の集落があった。
 
 ――うちは一族……。

 シカマルは塀で囲まれたナマエの家を駆け足で裏側へと回った。塀を超えればナマエより先に家へ着けそうだ。怪しいところがないか見るだけ、と誰にでもなく言い訳し、シカマルは塀を超えた。気配を消して、窓からナマエの家を観察する。

 ――たしかナマエは両親を亡くして1人暮らしだったはずだ。

 まさか抜け忍のサスケがナマエの家を出入りすることなんてないはずだとわかってはいても、念のための確認だとシカマルは中の様子をうかがった。
 特に変わったところはないように見えた。

 シカマルが部屋の様子を見ていると、ガチャ、と音がしてナマエが家に入ってきた。のんびりと上着を脱いでいる。ナマエがその上着をかける場所を作るためか――シカマルの死角から、ハンガーに掛かった服を持って現れた。その服をハンガーから外して、畳む。一見なんの問題もない行為だ。

 シカマルの視界には、その服の背面にマークが入っているように見えた。赤と白だったような気がする。しかし、それ以上は見えなかった。

 ――まさかな……。

 ナマエが着ている忍服の簡易的な帯を解き始めたので、シカマルは慌てて窓から顔を引っ込めた。

 カカシにどう報告するべきか迷っていた。何の繋がりもないと思っていたナマエとサスケはもともと近所に住んでいて、確証はないが、ナマエの家にうちは一族の服がある。
 シカマルはカカシが手配した暗部が到着するまでナマエが家から出ないか監視した。後味の悪い任務だった。

× | top | ×



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -