口寄せごっこ | ナノ


 木ノ葉病院個室。
 カカシは額当てを外したラフな格好でベッドに座っていた。ベッドの横にはヤマトが控えている。
 
「そうか、サスケはそれほどまで……。ご苦労。」

 ヤマトは先日の大蛇丸のアジトでの一件をカカシに報告した。サスケの強さや発言、サイのことなどすべてだ。ここまでは綱手に話したこととほぼ同じ内容だった。
 しかし、ヤマトはもう1つカカシに話しておきたいことがあった。確証はなく自信なさげにヤマトは続けた。
 
「あと1つ気になることがありまして……。ほんの些細なことなので火影様の耳にもまだ入れていないんですけど。」

「何よ。」

「サスケが言っていたんです。「今日はよく木ノ葉の忍と会う」って。」

「……。」

「すでに僕、サイ、ナルト、サクラもサスケと顔を合わせていました。なんだか引っかかっていて。」

「まるでお前たち4人の他に木ノ葉の忍がいたみたいな言い方だな。」

「偶然あの辺りを木ノ葉の忍が通るとは考えにくいですし。大蛇丸のアジトにいる木ノ葉の抜け忍をそう言ってるだけとも考えられますが……。」

 ヤマトは少ない可能性だが、憶測を否定する例を出してみた。しかし、ヤマト自身もカカシもあまりしっくりは来なかった。
 
「うーん、たしかにちょっと引っかかるな。サスケはともかく、大蛇丸が木ノ葉に内通者を送り込んでいたら厄介だ。」

「そうですね。」

「まっ、報告ありがとう。綱手様には俺から折を見て話すよ。」

「わかりました。」

 失礼します、とヤマトは病室を出ていった。カカシはそれを横目でちらっと見送った後少し考えた。

「口寄せの術!」

 カカシはパックンと他数匹の忍犬を呼び出した。

「ちょっとお前たちさ、サスケの匂いは覚えてるだろ?この辺にないか軽く探してきてくれ。なかったら戻っていいから。」

 カカシがパックンたちにお願いすると、パックンは不思議そうな顔をした。
 
「サスケがこのあたりにいるのか?」

「いや、サスケと接触した人間が木ノ葉にいるかもしれない。ま、確証はないけど。」

「わかった。」

 パックンたちは病室の窓から飛び出していった。それと同時に、コンコンと病室のドアがノックされた。

「失礼します。カカシ先生、お加減いかがですか?」

 ナマエだ。任務に出つつも、ナマエは木ノ葉病院で働いている。ナルトの同期なので、もちろんカカシとも面識があった。

「もう平気。」

「本当ですか?チャクラの消耗があるみたいですけど……。」

 カカシの様態を見ると、先ほど口寄せでチャクラを練ったことがバレているようだった。カカシはまあまあと言いながら誤魔化した。外傷の治りを見ながら、持ってきた兵糧丸をカカシに差し出した。

「今日の分です。水で飲みますか?」

「いや、いいよ。このままで。」

 カカシに兵糧丸の乗った小皿を渡すと、カカシは、あれ?と少し違和感を覚えた。

 ――匂いか?

 カカシは忍犬以上の嗅覚だった。ナマエにほんの僅かだがいつもと違う――なんならよく知った人物の匂いがついているような気がした。

「どうかしましたか?」

 小皿を持ったまま兵糧丸を口にしないカカシをナマエは不思議に思った。カカシの黒い瞳と、ナマエの黒い瞳がぱっちりと合う。

「いや、なんでもないよ。」

 カカシは兵糧丸をひょいと口に含むと奥歯で噛み砕いた。ナマエはそれを見届けて、部屋から退出しようとした。

「カカシ先生ーっ!来たってばよ!」

 ナルト、サクラ、サイがカカシを訪ねてやって来た。ナマエはサイのことは知らなかったが、班での話し合いがあるだろうと挨拶だけして去ろうとした。

「ナルトくん、久しぶり。」

「あれ?お前ってば……ナマエか?」

 ナルトが木ノ葉に帰還してから会うのは初めてだった。約3年ぶりに見たナルトは身長が伸びてたくましく成長していた。

「うん。身長伸びたね。」

「ナマエ……変わったな!なんていうか、可愛くなった!」

 ナルトはニシシと笑うと、ナマエの頬が赤くなった。ナルトの言葉は端的でストレートで照れてしまう。

「ちょっとナルトォ、わたしの時と違うじゃない!」

「サクラちゃんは変わってねーからな!」

「あのねー!」

 2人の掛け合いをナマエは微笑ましく見守った。たしかにアカデミー時代はおしゃれや身だしなみに気を遣う余裕がなく、自分でも野暮ったかったなと思うので、ナルトが変わったと思うのも無理ないと思った。

 ――サクラちゃんはもともと細くて可愛いからな。

 2人から半歩離れたところでサイがこちらを見ていたので、微笑んで会釈した。すると、サイも温度のない笑顔を作ってみせた。
 さてそろそろ、と部屋を出ようとすると、また扉が開いた。

「アスマ先生、ノックくらいしなさいってば!」

「体調はどうだ、カカシ。」

「こんにちは。」

 いの、アスマ、チョウジとその後ろにシカマルがいた。

「なんだ、ナルトとサクラじゃねーか。それにナマエも。珍しいな。」

 シカマルがこのメンツにナマエがいることを不思議に思ったようだったが、すぐこいつは仕事かと思い直した。シカマルがふと横を見るとサイもいたので警戒心を強めたが、サイが何者なのか説明され事なきを得た。

「お前ら先に焼肉Qへ行っといてくれ。良かったらカカシ班のみんなも一緒に行くといい。俺はカカシに話がある。焼肉は俺の奢りでいいからな。」

 ナマエが退出するタイミングを失っていると、ひとまずこの部屋の解散のタイミングとなったので、仕事に戻ろうとした。

「ナマエも焼肉行きましょうよ!」

「アスマ先生の奢りだし行くわよね!」

 サクラといのにがっちりと腕をホールドされ、ナマエも焼肉に行くことになった。

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