口寄せごっこ | ナノ


 サスケにキスされていると気づいたナマエは、サスケの胸を押して距離を取ろうとした。手はサスケのはだけた胸板に触れる。素肌に驚いてそれを引っ込めようとすると、その腕を易々と掴まれた。

「ン、サス……、」

「……っ、」

 サスケの舌がにゅるりと唇の間に入り込もうとする。それを口を閉じてなんとか阻止しようとした。するとサスケはナマエの下唇をはむはむと噛んだり、唇をペロリと舐めたりと別のアプローチを仕掛けてくる。無理やり奪われているにしては甘いそれに戸惑った。

「サス、んむ、」

 サスケやめてと言おうと口を開いたところに、サスケはすかさず舌を割り込ませた。口の中をサスケの舌が蹂躙し、我が物顔で好きに荒らしていく。

「やっ……サスケ……んっ、はぁ。」

「……ハァ、」

 思わず後ずさると、サスケはキスを止めずにその距離を詰める。すると、ナマエの膝裏に硬い簡素なベッドが当たり、そのままサスケに押されてベッドに腰かけた。

「はぁっ……ねえ……サスケってば、」

 ベッドに腰かけた際にサスケの唇が離れたので、息を整えながら話しかけた。当然だが、数年ぶりに話す幼なじみにこんなことをされるとは思っていなかった。サスケはナマエの言葉を無視して、首筋にキスし始めた。
 
「サスケ、やめて……。」

 サスケの手が片方のキャミソールの肩ひもを、肩から外した。抵抗しようとサスケの腕を掴むがビクともしない。サスケにとってナマエの小さな抵抗などないに等しいので、構わず首筋にキスし時折優しく噛んだ。

「ぁっ、」

 痛みと快感を拾って小さく声を出すと、サスケは何を考えているのかわからない無表情のまま顔を離した。サスケはナマエの首筋に痕が残っているのを確認してから、サスケもベッドに腰かけてナマエを抱きしめた。
 
「俺はもうすぐ大蛇丸を殺す。」

「!」

「それから、あいつを……殺しに行く。」

 サスケの低くなった声が耳元で響く。あいつというのはイタチのことだろうと思った。何も言えなかった。サスケは頑固だし、あの日以来復讐のためだけに生きていることはわかっていた。止めたって無駄だと思った。

「……うん。わかった。」

 止めてほしいのかもしれないとも思ったが、それはできなかった。あんなに優しい幼なじみが、大好きだった兄を殺すというのは生半可な覚悟ではないと思ったからだ。

「お前は、イタチが死んでもいいのか。」

「えっ?」

 まさか自分に感想を求めてくるとは思わず、ナマエは驚いた。

「俺が……。」

 サスケは言葉を止めた。ナマエはサスケがキスしたのもこうやって話すのも、心に迷いがあるのかもしれないと思った。ナマエの中でサスケは、優しくて感受性豊かなあの頃のままだ。
 ナマエはおもむろにサスケを抱きしめ返した。サスケの復讐を手伝うことも、後押しすることも止めることもできない自分ができるのは、サスケを甘やかすことだけだと思った。サスケもますますナマエを強く抱きしめた。
 
「サスケ……。」

 ナマエがサスケの名前を優しく呼んだので、サスケはまた無表情のままキスしようと顔を近づけたので、思いがけず「だっ!」と大きな声が出た。

「サスケ、ダメだよ。やめて……。」

「……。」

 ナマエが怯えたように小さく震えると、何を思ったかサスケは近くにあったサスケの上着を着せた。たしかに寒かったし、幼なじみの前とは言え薄着で恥ずかしかったのでありがたく上着を受け取って羽織った。

「サスケ。あの……」

 その時だった。ボンッ!と音がすると、ナマエのまわりから煙が出て、ナマエの姿はその場から跡形もなく消えた。サスケはその様子を静かに見た後、ナマエから取り上げた巻物を広げた。巻物の真ん中にぽっかり空いていた空白部分には、人という字が戻っていた。

「……。」

 サスケはそれを確認した後、懐にしまった。午後から大蛇丸と新術の修行をする予定だったので部屋を出た。

 しばらく大蛇丸を待っていると、遅れた上にサイという木ノ葉隠れの忍を紹介され、サスケは苛立った。修行を終えて先ほどまでナマエがいた部屋に戻った。当たり前だがそこにもうナマエの姿はなく、ナマエのいたベッドに触れる。
 3年ぶりに姿を見たナマエは美しく成長していた。それでいて中身は優しいあの頃のまま。一目見るだけでいいと思ったが、会うと止まらなくなった。

「……。」

 その時、サスケの体にヘビのようなものが這った。

「誰だ?」

 サスケは少しも動揺せずに淡々と答えた。部屋の外にはサイがいた。

「バレちゃいましたか……。でも僕はもう先手を取ってる。」

「目的は何だ?」

「僕は君を、木ノ葉へ連れ帰る!」

 サスケはサイの術を力で振りほどくと、アジトに大きな穴が開いた。そうすると次々と木ノ葉隠れの忍が現れる。サスケを追ってきたサクラ、ナルトだ。
 
「ならカカシもいるのか?」

「カカシさんじゃなくて残念だけど、僕が代理だ。」

 そして、ヤマトもいた。サスケは捨ててきた里の忍たちを見て無感情だった。

「カカシ班か……。今日はよく木ノ葉の忍と会う。」

「よく?」

 ヤマトは、今日潜入してきているのはこれで全員のはずだと思い、他に木ノ葉の忍と会ったのかと疑問に思ったが、サスケはその問いを無視した。

「俺には別の繋がりがある。兄との憎しみっていう繋がりがな……。いくつもの繋がりは己を惑わせ、最も強い願い大切な思いを弱くする。」

 サスケは自分に言い聞かせるように言った。ナマエと会うべきでないことはわかっていた。でも万が一、大蛇丸に体を差し出すことになったら――その時までにナマエに一目会っておこうと決めていた。
 
 サスケにとっての「繋がり」は、復讐で繋がる兄と、たった1つの巻物で繋がるナマエだけだった。

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