番外編IF
ナマエとサスケは下忍になり、それぞれ担当上忍のもと任務に奔走していた。
「サスケ!怪我したって聞いたよ……。大丈夫?」
「ナマエ、別に大丈夫だ。」
「頬の傷は……?それに首が……穴開いてるよ!」
ナマエは1か月ほど任務で里を離れていたサスケに会いに行くと、傷だらけの様子に驚いた。Cランクと聞いて少し心配していたが、頬には大きな絆創膏が貼ってあり、首やスネには無数の小さな穴のような傷があった。
「このくらいなんてことない。」
「あるよ……!病院は行ったの?」
「カカシに連れていかれた。」
「……でも心配だよ。」
ナマエはサスケの首元を覗き込んで、その塞がりかけている傷のそばをなぞった。
「っ!……触るな。」
「ごめん、痛かった?」
サスケがぷいとそっぽ向いてしまったので、よほど痛かったのだろうとナマエは少ししゅんとした。
「お前は任務で怪我ないか。」
「ないよ。まだ猫探しとか子守とかばっかり。サスケたちはCランク任務もらうの早かったね。」
ナマエはサスケの優しさににっこり笑った。ぶっきらぼうで口は悪いがいつもナマエを心配してくれる優しい幼なじみだ。
「あ、そうだ。ご飯作ろうか?今日帰ってもうち誰もいないし、一緒に食べようよ。」
「食う。」
「作っておくから、先にお風呂入っちゃえば?あ、お風呂手伝わなくて平気?」
「ウスラトンカチ!」
サスケがナマエをトンと押して顔を赤くしたので、ナマエはサスケもお年頃だなと思った。ナマエはサスケの裸を見てもおそらく何も感じない。
「ちょっと前まで一緒に入ってたのに。サスケってばシャイだね。」
「お前が気にしなさすぎだ!」
サスケはまだ首を痛そうにしながら風呂へ向かったので、ナマエはそれを見届けてから台所へ向かった。
米をとぎ、味噌汁を作り終えたナマエは、次は魚の切り身を焼こうと冷蔵庫を開けた。ナマエの両親は任務で不在にすることも多いので、自然とナマエは自炊ができるようになったし、サスケの家で何度もご飯を作っている。むしろサスケの家の冷蔵庫の中身は、当人よりも熟知していた。
ナマエは背後に風呂から上がったサスケの気配を感じながら、魚焼きグリルに切り身を2切れ置いて塩をふった。サスケはそれをナマエの後ろから黙って見ている。
「もうすぐできるから、そっちで待ってていいよ?」
「ああ。」
そう言いながらも、サスケは味噌汁をかき混ぜたり箸を用意したりナマエのそばをうろちょろしていた。
ようやく夕飯の支度が出来上がり、2人は向かい合って座った。
「「いただきます。」」
ナマエもサスケもどちらもそれほどおしゃべりな方ではないので、2人で囲む食卓は静かだ。時計のカチカチする音と、食器と箸のぶつかる音がするくらいで、他に音はない。
こんな時、ナマエは自分がいない時サスケはこの静かな家でひとりぼっちなのだと再認識させられる。サスケをできるだけ1人にしたくなかった。
「今日泊まっていこうかな。いい?」
「……好きにしろ。」
お互い13歳という多感な年頃ではあったが、ナマエがサスケの家に泊まることはしょっちゅうあった。ナマエはサスケを1人にしたくないし、サスケを幼なじみとしか見ていなかったからだ。
「ナマエ、班員のやつらは……どうだ。」
夕飯を食べ終え、食器を片付けるナマエに、サスケが問うた。
「え、どうって?先生もみんな優しいよ。」
「……そうか。」
「わたしが人見知りだから心配してくれてる?」
「……違う。」
ナマエは違うと言ったサスケが嘘をついていることはわかった。ナマエはサスケの前で明るいが、基本的に男の人の前で緊張してしまい苦手だった。
サスケは、人見知りうんぬんではなくナマエが言い寄られたりしていないか確認したかったのだが、ナマエが鈍感で何もわかっていないので聞くのを諦めた。
ナマエもサスケの家の風呂に入り、サスケの部屋着であるTシャツとハーフパンツを借りた。サスケとナマエの身長差は今はそれほどなく、ブカブカということもなかった。
おやすみと言うと、ナマエとサスケはくっつけた布団で隣同士で眠った。サスケは毎度くっついた布団を見て微妙な顔をするが、ナマエはサスケが寂しくないように良かれと思ってやっている。
「ん……、」
ナマエは微睡みの中、くっついてきた体温で意識が浮上した。背中にぴったりと身体の丸め方まで同じようにサスケが張り付いている。ナマエはサスケが素直に甘えているようで嬉しく、そのまま再び眠りの世界に入ろうとした。
「!」
しかし、サスケの腕がナマエの眠りを妨げた。ナマエの腕と腹の間に通っていた手が何かを探すように動き、ナマエの発達途中の胸を掴んだ。
「ゎ、」
サスケの手は、発達途中のハリのある胸の弾力を確かめるように掴んでは離す。首筋に当たるサスケのほのかな寝息は規則的で、眠っている間に無意識に触っているようだった。ナマエは驚いたが、騒いで起こすほどのことではないような気がして口を噤んで我慢した。
――どうしよう……。
嫌ではないが恥ずかしい。夢の中で柔らかい何かを取る夢でも見ているんだろうかと胸から気を紛らわせていると、今度は首筋に当たる寝息と背中にぴったりついた体温が気になりだした。
しばらくナマエは眠れずにひとり悶々としていると、サスケの手がへちゃりと力なく動かなくなった。ナマエはふうと息を吐き肩をなで下ろすと、もうひと眠りしようと固く目をつむった。お風呂を手伝おうかなどと気安く言えない年齢であることを理解した。家族だが男と女だ。
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