口寄せごっこ | ナノ 二十五


 ※原作どおりに人が死にます。閲覧ご注意ください。




 戦争ではゴミのような死が転がっていると誰かが言っていたが、わかっていても愛する者の死というのは受け入れがたい。
 ――いくら訓練を受けた忍であっても。

「ネジさんっ……!うそ、やだ!ネジさん……!」

 ナマエの悲痛な声が戦場に響き、ヒナタやナルトがそばで涙を流す。周囲のネジを知る者たちがざわめき動揺する。
 ヒナタとナルトを庇って攻撃を受けたネジは、いくら医療忍術を施しても蘇生は不可能な致命傷を負っていた。

「ネジさん!ネジさん……!やだ……っ!」

 ナマエは自分の腕の中で生気を失う恋人に絶望した。ネジの額の呪印が消え、絶命したことを実感する。

「うそ……。」

 ナマエは座り込んだが、ここは戦場だった。
 強い意志を持ったヒナタにナルトが励まされ、ナマエのそばで2人は寄り添うように立ち上がった。

「ナマエちゃん……っ、」

「うん、わかってる……。」

 ヒナタがナマエに手を差し伸べた。ヒナタはナマエがもう二度と立ち上がれないかもしれないと思ったが、それでも諦めなかった。そんな気持ちが届いたからかナマエはヒナタの手を取って立ち上がった。

「ありがとう、ヒナタ……。」

 これが戦争かと思った。そしてまた1人大切な人が死んだ。ナマエは立ち上がったが、その瞳は暗かった。ナルトのように世界の命運をかけた忍でない自分は、勝つまでかもしくはゴミのように死ぬまで闘い続けなければいけないのだ。
 視線を落としてネジの遺体が目に入ると、勝敗も忍世界の未来もどうでもいいようなことな気がしてきた。それでも立ち上がって闘い続けるのは、ネジが託した想いを繋げるためか。……それとも闘って死ぬためか。

 ナルトの九尾チャクラが皆に配られていき、大きな力となった。ナマエもナルトのチャクラを感じながら、何も考えずに闘い続けた。



 サスケが最前戦に到着した。同期がわっと集まる中、ナマエは無心で怪我人の治療にあたっていたので、サスケの到着には気付いていなかった。
 集まって好き勝手言う同期たちに「相変わらずやかましい」と一蹴しながら、サスケはその場にいない1人のことを視線だけで探した。

「……あいつなら向こうの方にいるぜ。」

 シカマルが後方を指しながらサスケに言うと、サスケは頷いたり返事をしなかったが無表情のまま安堵した。シカマルのそばにいたいのやチョウジは何のことを言っているんだろうという顔をした。結局ナマエは戦場の混乱の中、サスケが帰ってきて火影になると宣言したことなどつゆ知らず、闘い続けるしかなかった。






 両親が行ってらっしゃいとナマエを見送り、走り出すと近所に住むサスケとイタチもナマエに手を振る。

「ナマエ、前向け。」

「走ると転ぶぞ。」

「サスケ、イタチ兄さん、わたしのこといつまでも子ども扱いしないで!」

 ナマエは拗ねたような声を出して、2人を見て笑った。
 街へ出ると、チームメイトの2人と担当上忍がナマエを待っていた。遅いぞ、行くぞ、と言われて並んで走り出す。シカマルたちがお前らも任務かと声をかけてくるので、頷いてさらに走る。ナルトの隣で笑うヒナタも後でねと手を振ってくれた。

「ナマエ。」

「ネジさん!」

 ネジが門の前で待っていた。チームメイトが彼氏のご登場だとはやし立てるが、気にせず抱き着いた。

「どうした、人前でめずらしいな。」

 ネジの胸に飛び込むナマエを容易に受け止めると、ネジはナマエを見下ろして微笑んだ。ナマエも見上げてにっこり笑った。

「なんだかこうしたくなって。」





 すべてが終わった時、ナマエは目覚めた。
 絡まる繭のようなものから抜け出す。ぼやっとする頭に残るシーンは、敵が見せていた夢だったのかと働かない頭でなんとか気付いた。

「終わったんだね……。」

 生き残った者たちが喜びを分かち合う中、ナマエはぼーっとその様子を見ていた。

「ナマエちゃん!」

 ヒナタがナマエに駆け寄り、手を差し伸べてくれた。ナマエは先ほどのことがフラッシュバックし一瞬躊躇ったが、ヒナタの手を掴んで立ち上がった。ヒナタとナマエはお互いが生きて戦争を終えた幸運を噛みしめた。

「ナマエ。」

「シカマルくん。」

 シカマルはナマエの暗い瞳を見つめた。シカマルは父親を、ナマエは恋人を亡くしたので、手放しで喜べる状況ではなかったが、お互いの無事な姿を見てほっとした。

「……サスケがお前を探してた。」

「サスケが?来てるの?」

 ナマエは目をぱちくりしながら、意外な人物の名前が出てきて驚いた。
 
「あんなでかい蛇に乗ってたら普通気付くだろ。」

 シカマルは戦争の最中とはいえ、サスケの存在に気付いていなかったことと、終戦の立役者であろうことを知らないナマエに驚き返した。

「そうだったんだね……。」

 ナマエはつぶやくと目を伏せた。いまいち噛み合わないナマエとの会話に何か一言言おうと思ったが、なんて言っていいかわからずシカマルは口をつぐんだ。
 その後、いのやリー、テンテンがナマエのもとに来てネジの死を悼んだが、ナマエの瞳は暗いままだった。

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