二十四
ナルトにサスケのことを伝えに行くサクラ、サイ、キバ、リーの小隊がまさかそのままサスケを探しに行くとは思わず、ナマエは自分が参加できなかったことを悔いた。
それでも、サクラのような覚悟がなく、逃げてほしいと告げることしかできない自分は結果として行かなくて良かったのだと思うようになった。
――わたしはサスケのためには何もできない……。
ナルトやサクラたちが戻ってきて再び同期たちは集まると、ナルトやサクラの報告を聞いた。
「とにかく今のサスケとは誰も闘っちゃだめだ。闘えるのは俺しかいねー……そういう意味だ。」
「一体何があったんだ?詳しく説明しろ。」
「……言うべき時がきたら言うってばよ。んじゃ!俺ってば腹減ってっから一楽行ってくるってばよ!」
ナルトは明るく言って去っていってしまった。ナルトの絶対的な物言いに、皆これ以上何も言うことができなかった。
「ナマエ、……これで良かったのか。」
ネジはまわりに聞こえないようにナマエにこそっと伝える。ナマエはそれを聞いても下を向いたままだ。
「わたしがサスケにしてあげられることはないから。ナルトくんがそう言うならそうなんだよ……。」
ナマエはこの数日間口寄せされるのを今か今かと待ったが、もちろんなかった。そもそも契約してから5年以上使われることがなく、ここ最近になって何度かサスケの気まぐれで呼ばれただけだ。正直もう二度と使われない気さえしている。
――サスケの復讐の対象に、きっともうわたしも入っている……。
ナマエはサスケのことを家族と思っていたが、サスケにとって自分はなんなんだろうとたまに思う。
ネジはナマエが悲しげに目を伏せるのを黙って見ていた。自分を変えてくれたナルトや恋人のナマエが手を伸ばしても救えないところまできているサスケに複雑な思いだ。ネジもシカマルたちと同様、サスケは木ノ葉で処分するしかないと思っていた。
「あ、あのさー全然話変わるけどさー……、」
テンテンが言いづらそうにジト目でネジとナマエを見た。ネジとナマエだけでなく、その場にいた者全員がなんだろうという顔をした。
「ちょっとそこの2人なんか怪しくない!?」
テンテンは最初言いづらそうにしていたが、最後まで言い切り、指でビシッと2人を指した。少しシンとしたが、そこからは皆言いたい放題大騒ぎだった。
「怪しい……というのはそういうことですか!?本当ですかネジ!」
「ハァ?まじかよ!お前ら付き合ってるってこと!?」
「ちょっと!ナマエ、聞いてないわよ!」
リー、キバ、いのが一斉に2人へ問い詰めた。シリアスな雰囲気とは打って変わってナマエは面食らい、じわじわと注目を集めていることも恥ずかしく頬が熱くなった。彼氏でーす!と言ってもいいのかわからず、ネジをチラッと見上げると、ネジはまったく動じていなかった。
「わざわざ言う必要ないだろう。」
ネジは腕を組みながら言うので、ナマエは矢面に立たないようにできるだけ影を薄くした。その時、ナマエは口を手で押さえているヒナタと目が合い「ヒナタには後で言うつもりだったから……!」と念を送った。
ネジの言葉を肯定と取った面々は、またさらにわっと盛り上がった。恥ずかしく思ったが、サスケのことでいつまでもどんよりしているよりは良かったかもしれないと思った。
「やっぱり怪しいと思ってたのよ、この間とかさー!班員には言ってもいいんじゃない?」
「ナマエちゃんとネジ兄さんが……!」
「このメンバーには言うべきだ……なぜなら俺たちは仲間だからだ……。」
「意外な2人ね、おめでとうナマエ。」
テンテン、ヒナタ、シノ、サクラが言った。チョウジはシカマルの横顔をこっそり盗み見てから何も言わなかった。シカマルは2人が両想いなのはなんとなくわかっていたので、いつの間にかくっついてたのかと思った。
「サスケくんのことで暗くなってても仕方ないわ。ナルトには何か考えがあるみたいだし。女子!これから女子会行くわよー!」
いのは悲しい気持ちを振り払うように、明るく言った。キバは「一番泣いてたのお前じゃん」とつぶやいたが、誰もつっこまなかった。
「いの良いこと言うじゃない。ナマエは強制参加よ。テンテンさん、ヒナタも行きましょ!」
サクラもいのにつられて元気が出たのか、ネジの少し後ろで影を薄くしていたナマエの腕を取った。テンテンとヒナタもうんうんと力強く頷き、女子会に赴いた。
「さっ、肉食べて飲んで、恋バナするわよー!」
「「「「「乾杯!」」」」」
ナマエ、いの、サクラ、ヒナタ、テンテンの5人は焼肉Qに来ていた。酒ではなくソフトドリンクだが、皆で乾杯し肉を焼いた。
通路を隔てた隣も騒がしく、同じ流れで木ノ葉男子会を行っているらしく、リー、ネジ、チョウジ、シカマル、シノ、キバがいた。
「で、ナマエ。肉ばっかり焼いてないで聞かせなさいよ。」
サクラがナマエにずいと近寄った。ナマエは意味もなく肉を何回もひっくり返しながら、頬を赤くした。
「ね、ね、どっちから告白したの?」
テンテンも前のめりだ。堅物のネジがどんな恋愛をするのか興味があるらしい。ナマエはチラッと通路とちょっとしたパーテーションで仕切られてはいるものの声はわりと筒抜けな男子会の方を見て、言ってもいいのだろうかと悩んだ。
「そりゃネジさんでしょ!ナマエは恥ずかしがり屋なんだから。」
「ネジ兄さんから……?そうなの?ナマエちゃん……!」
いのとヒナタもネジから言っただろうと予想を立てた。ナマエは困り果て、とうとう答えることにした。
「んー……、ネジさんから言ってくれたけど……わたしの方が先に好きだったと思うよ……。」
ナマエは男子会に聞こえないように小さな声で言ったが、男子会の方にも聞こえていたようで、おー!とキバやリーが盛り上がっている。
「ネジやるじゃない!」
「良かったね……!」
テンテンやヒナタもネジを見直したようだ。ナマエはネジさんごめんなさいと思いながら、早く自分のターンが終わるのを待った。きっかけやら出会いを聞かれ、ほどほどに答えたりしていると、いつの間にか男子会は男子会で里のことや任務のことなど真面目に話し始め、女子会の会話は聞かれていないようでほっとした。
女子会の会話の内容も木ノ葉のかっこいい男性の話や紅の子どもの話などだんだんとナマエとネジの話題ではなくなった。
「はぁー食べた!また明日からも頑張れるわね。」
「本当。次いつこうやって集まれるかわからないからね。」
第四次忍界大戦は迫ってきている。同期会ができるのも当分先だろうと皆思った。
「今日は楽しかったわ!」
テンテンがにっこり笑うので、ナマエもヒナタもうんうんと頷いた。
「じゃ、最後に本日の主役のナマエ!彼氏の好きなところをドーゾ!」
サクラが手をグーにしてマイクに見立ててナマエの前に差し出した。ナマエはひえっと言ったが、誰も助けてくれなさそうな上、言わないと帰してもらえなさそうだと思い心を決めた。サクラの手を取ると、マイクに見立てて小さな声で――できれば男子会の方には聞こえませんようにと願いながら言った。
「……全部。」
いの、サクラ、テンテン、ヒナタがキャーっと騒ぎ、ごちそうさま!とナマエをペシペシ叩いた。男子会の方にも微かに届いていたようで、リア充爆発しろとネジが珍しく責められていた。
ネジもほんのわずかに頬を赤くして男子たちに反論もせずにナマエの「全部」を噛み締めた。
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