口寄せごっこ | ナノ 二十一


 ナマエを含むフォーマンセルの小隊は国境近くの任務を終えて木ノ葉隠れの里の入口であるあ・んの門の前にいた。
 ナマエも隊長もすべて中忍で、報告書は隊長が書くと言ったのだが、次また任務があるという彼のために、ナマエが代わりに書くと申し出た。

「いいのか?ありがとう!」

「ええ。構いませんよ。」

 ナマエはにっこりと笑うと、隊長の男は大喜びだった。イレギュラーや特記事項も特になかったので隊長が書く必要もない。ナマエは報告書を書くのが嫌いではないのでまったく構わなかった。尋問があってから里外の任務が減り、見知った顔の人たちとの任務しかしていないので仕事量が少し物足りないくらいだ。
 ナマエは知らないのだが、もちろんこれは木ノ葉上層部に万が一にも暗殺されないように綱手が配慮したからだ。

「じゃあ俺たちまた一緒の任務なんだ。」

「またね。」

 隊長とその補佐の中忍が去ると、ナマエはもう1人の中忍の男と2人になった。
 ナマエがじゃあと笑って門を潜ろうとすると、その男に肩を掴まれた。
 
「どうかしました?」

 何度か同じ任務に就いたことがあるが、それほど親しくもない男性に触れられると嫌悪感がある。ナマエは顔に出ないように避けて肩から手を外させた。

「いやー……ナマエちゃんこの後何か予定ある?」

「?報告書を書きます。」

「それはそうだと思うんだけどさ。ご飯とかどうかなって。」

 男はナマエとの距離をぐっと詰めてきたので、ナマエは少し怖くなった。身を縮ませて少し後退することしかできない。こんなに男性に近付くのは、幼なじみのサスケと組手をするネジくらいだ。さほど知らない男性だとこんなにも圧を感じるのかとナマエは胸の前で少し震える拳を握った。

「あ、いえ、終わったら予定がありますので……。」

 ナマエが穏便に済ませようと男の顔色を伺いながら断ると、男はますます図に乗り肩へ手を回してきた。

「終わるの何時?夜とかさ、どうかな?」

「や……、」

 男はナマエに耳打ちするように顔を近づけてしゃべった。

「ナマエちゃんなんか最近色っぽくなったよね?今日やっぱいいなって思ってさ……、」

 男がナマエを見下ろす目が恐ろしかった。ナマエの怯えた顔と、比較的ふくよかに育った胸を気付かれないように見比べるようにしている。ナマエはぞっとして、今後気まずくなってもいいと思いながら男を押し返そうとした。

「痛っ!」

「手を離せ。」

 急に男が離れたと思ったら、ナマエの目の前には黒髪の長い髪が写った。ネジが男の腕をひねり上げて払ったところだった。

「ネジさん……、」

「ナマエ、嫌な時は力の限り抵抗しろ。」

 ネジは白眼を発動させたままナマエに説教したのでナマエはびくびくしながらハイ……と小さく返事した。

「お前はいつまでそこにいるつもりだ。」

 ネジは男に一瞥もくれずに吐き捨てると、男は脱兎のごとく走り去って行った。

「ありがとうございます。すみません……。」

 ネジとナマエが会うのはあの日以来だった。ナマエはネジの顔を見られないまま、耳に髪をかけたりして落ち着かない様子だ。
 ネジは白眼の発動をやめると、こちらを見ないナマエを見下ろした。

「お前はいつも目をそらす。」

「!」

 ナマエは言われて、ネジの方を見た。ネジの目はナマエが想像するより優しげな色だった。てっきり軽蔑されていると思っていたナマエは少し驚いた。

「俺はそれに特別な意味があると思っている。」

 ネジはナマエの頬に手を添えて、目をそらせないようにした。その手つきは優しく、ナマエはネジからこんな風に触れられるのは初めてだと思った。

「俺はお前が好きだ。」

「え……、」

 ネジの顔がすっと近づくと、唇に柔らかい感触がした。ゆっくり離れていき、ナマエがぽーっとしていると、もう一度唇が合わさった。

 ナマエが放心していると、ネジはナマエから離れた。その直後に「おーい」と声がする。

「ネジ、早いですよ!勝負は門を出たところからにしましょうよ……!」

 リーだった。自分のリュックを背に、胸の前にはネジのものと思われるリュックを抱えていた。少し遅れてガイ、さらに遅れてテンテンも来た。

「ん?ネジが珍しく熱くなっていると思ったら……!青春してるなー!」

「ちょっと、ネジが走り出したらこの2人も追うに決まってるじゃない……!もー任務前からへとへとよ……!」

「リー、荷物を返せ。」

「ネジが急に押し付けたんじゃないですか!」

 わいわいと騒がしいガイ班を、ナマエは放心状態のまま眺めた。

「じゃあ行くぞ!」

「行きましょう!」

「ナマエ、またお茶でもしましょ!」

 ガイ班の面々がリュックを背負い直して門の外へ向かうのを、ナマエはかろうじて手を振って見送った。ネジは特にナマエに何か言うことも意味ありげな視線を寄越すもなく隊の一番後ろで走り去っていった。

「今のは……?」

 ナマエは自分の唇に手を触れてみたが、何が起きたか理解するまでに時間がかかった。

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