口寄せごっこ | ナノ 十三


 ナマエは任務が終わって家に着いたところだった。

 ボンッ!

 さすがに慣れてきて、ナマエは冷静だった。1人で家にいる時でよかったと思いながら、煙を手で扇ぎ視界が開くのを待った。
 そこで気が付いた。いつも呼び出される床は冷たいが、今呼び出された場所は畳で温かみがあった。

「えっ……サスケ?大丈夫?」

 普段呼び出されているようなアジトではなく、どこかの旅館の一室のようなそこに、口寄せの巻物を片手に布団に横たわるサスケがいた。額には包帯が巻かれていて小さな傷がいくつもある。

「サスケ?」

 ナマエは布団に近づき、サスケを覗き込んだ。

「ナマエ……。」

 サスケはナマエの頬に手を伸ばした。ナマエはされるがまま、頬に手を這わすサスケの弱った顔を見つめた。ついこの間無理やり全身を触られたが、今のサスケにはそんなことできそうもなかったし、単純にボロボロのサスケが心配だった。

「サスケ、診てもいい?」

 布団から出ている顔の傷から、ナマエはチャクラを流して治癒していった。サスケは治療するナマエの腕を引っ張ってナマエを抱きしめた。ナマエは寝転ぶサスケの上に覆い被さる体勢になった。ナマエが起き上がろうとしても、ボロボロのサスケでさえ力及ばない。

「チャクラ不足でお前を数分しか拘束できない……。」

 サスケはナマエを抱きしめながら言った。ナマエはサスケに口寄せされている身。サスケの練るチャクラ次第でナマエの拘束時間が決まることを今初めて知った。いつも20分ほどだったので、今回はいつもの4分の1ほどだということだ。

「チャクラが減ってるなら、無理して呼ばなくていいのに……。」

 ナマエはサスケの腕の中でもごとご言ったが、サスケは聞こえていたはずなのにさらに抱きしめる力を強めてナマエの言葉を無視した。

「ナマエ、顔を上げろ。」

 サスケのその言葉には艶っぽい響きがあった。ナマエはキスされると勘が働いたので、サスケを強く抱きしめ返してその言葉に抵抗した。
 サスケからすると、ナマエが逆に甘えてきているように感じてこれはこれでいいかと思った。

「サスケ、誰だよその女!」

 ナマエはサスケの腕の中で、背後から知らない女性の声がした。ナマエはいけないことをしているような気になってサスケの腕から出ようとしたが、サスケがなかなか離さなかった。

「えー!俺たちが調べてる間に女連れこんでんの?いつの間に?」

 茶化すような男性の声も聞こえて、ナマエはサスケの腕からようやく抜け出せた。
 ナマエは髪が乱れたまま顔を上げると、赤い髪の女性、白い髪の男性、大柄な男性の3人がいた。それぞれ香燐、水月、重吾だった。

「おいお前!誰なんだよ!木ノ葉の忍だろ!」

 香燐がナマエを見下ろして睨みつけながら怒鳴った。ナマエはびくっとしながらも、サスケの幼なじみ……とだけ答えた。

「サスケを探してた木ノ葉の連中じゃないってことだろ?サスケが連れ込んだんだ?」

 水月がナマエと目線を合わせるようにしゃがんだ。ナマエの顔をまじまじと見て、ふーんと笑った。サスケが何も答えないので、ナマエが慌ててしまった。弁明しないとと思い口を開く。

「わたしはサスケの幼なじみで医療忍者で、サスケを治療するために呼ばれただけですので……。」

 ナマエは主に香燐を見て言った。サスケを好きになる女性はたくさんいたので、香燐もそうだということはすぐわかった。それに何も言わない重吾も怖かった。好きな時にじゃあわたしはこれでと去れない口寄せがの術が憎い。

 ナマエが気まずそうに視線を動かすと、香燐の腕が目に入った。たくさんの細かな傷があり、ナマエは立ち上がって香燐の方へ近づいた。

「怪我、よかったら治しましょうか?」

 ナマエは口寄せらしくサスケの役に立つ働きをしなければと思った。サスケはナマエの顔を見るためだけに呼び出しているのだが、ナマエはその気持ちを理解していなかった。

「ハァ!?ああ、これか。これは怪我じゃねーよ。」

 香燐はナマエが腕を見て言ってることに気付いて、腕まくりをして噛み跡のついた腕を出してニヤッと笑った。

「これはサスケがわたしを噛んだ痕だから。」

 香燐はうっとりした表情でナマエに言うと、ナマエは目を開いて驚いた顔をした。

 ――サスケの女性の扱いって……。

 ナマエは香燐の能力を知らないので、幼なじみの性癖を覗き見てしまったようで気まずい気持ちになった。さらに、合意も取らずに自分の身体を触ったサスケに合点がいってしまった。

 ――サスケは寂しさをわたしやこの人とか……女の人で誤魔化しているのね。

 ナマエの勘違いなのだが。

 その時、時間がきてナマエの身体はボンッ!という音と煙とともに跡形もなく消えた。重吾が口寄せか……と小さく呟くと、水月と香燐も納得したようだった。
  
「なるほどね。サスケの好みはああいう感じなのか。どうりで派手な女に群がられても顔色1つ変えないわけだ。」

 水月はサスケと香燐を見ながら、意地悪な顔でニヤニヤと笑った。 

「あんな地味な女!サスケが好きなわけねーだろ!」

「……で、イタチの情報は集まったのか?」

「てめー!質問に答えてからにしろ!」

 香燐がサスケに文句を言うが、サスケは相変わらずマイペースで、結局ナマエのことを言及することはなかった。

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