九
同日の夕刻になると、家で休んでいたナマエのもとへ綱手から伝令が届いた。またも隊長のネジのもとで、火の国に侵入した暁の2人組の捜索だった。ナマエは感知できる口寄せを使える上に医療忍者なので、接近戦タイプのネジと相性がいいためだろう。ナマエたちは里のあ・んの門の前で集合すると、再び捜索を開始した。
「!ネジさん、戌の方角に複数人のチャクラを感じました。戦闘中かもしれません。」
ナマエの使う小さな鳥の口寄せが戻ってきた。すぐさまネジに知らせると、ネジは白眼を発動させた。
「あれは……ナルトか?」
その瞬間、その方角からズドーン!と大きな音が鳴り土埃が立ち込めた。ナマエは偵察をネジの白眼に任せ、八方に散らばせた口寄せを解いた。戦闘に加わることになるかもしれないと、ナマエは攻撃用の口寄せの巻物に手をかけた。
ネジを先頭に近づくと、ナルトが暁の1人を倒したところで、カカシ、いの、チョウジ、ヤマトもいた。
「ナルトくん!」
ナマエは巨大な穴の中心で寝そべるナルトに近づくと、肩を貸して助け起こした。
「アレ……?ナマエがなんでここに?」
ナルトはヘトヘトでフラフラなので、ナマエだけでは支えきれずに少しバランスを崩したが、さっとチョウジがナルトを支えた。ナマエは支えながら、大きめの傷から医療忍術を施していった。
ナマエはナルトの傷を治しながら、あたりをキョロキョロと見た。
「あの……シカマルくんは?」
ナマエがナルトやチョウジに聞くと、どうやら違う場所でもうひとりと戦っているようだった。しかし、サイとサクラとパックンがもうすでに増援に向かっているという。
しかし、ナマエは不安に駆られた。今すぐにでもそちらに行きたい。ひとりで暁相手に挑むなんて危険すぎる。
「どうやら、向こうも終わったようだな。」
ネジがそう言うので、ナマエははっと顔を上げた。ネジが白眼である方向を見ていた。少しすると、シカマルとサイとサクラ、それにパックンがやって来た。ナマエはシカマルの姿を見てホッとした。
「シカマルくん……、」
「ナマエ?それにネジも。なんでここに?」
「お前たちが倒した暁の捜索と警備の任務だ。」
そうかよ、と言うとシカマルはナルトたちの様子を見て誰ひとり欠けることなく勝利したんだとホッとした顔をした。そんなシカマルを見てナマエも心の底から良かったと思った。ナマエの視線に気付いたのか、シカマルとナマエはぱっちりと目が合った。
「……良かったね。」
「……ああ。」
シカマルとナマエの意味ありげな雰囲気に気付いたのはいのとチョウジとネジとサクラだった。そんな中、サクラのそばにいたサイがようやくナマエの存在に気付いた。
「あれ、ビッチ……じゃなかった。ナマエさんたちの小隊はぐっ、」
サイの言葉は最後まで紡がれることはなかった。サクラがサイに強めの肩パンを食らわせたからだ。ナマエはまた言われた……とショックと恥ずかしさもあり、サイには悪いが、サクラちゃんありがとうと言った。
「そろそろ俺たちは行く。」
ネジはナマエ含む自分の小隊に目配せした。ナマエはチョウジとサクラにナルトを任せると、ネジのそばに寄った。
「じゃあ、わたしたちは向こうの警備があるから。また里でね。」
ナマエは同期たちに声をかけると、ネジらとともに去っていった。
「ひとまず火の国にいた暁が始末されてよかったっすね。」
ネジの後ろを追いかけて走るナマエの横にいつの間にか並んで走っていた中忍の男が言うので、ナマエはそうですねと答えた。
「それよりナマエさん、さっきのサイさん?と何かあったんですか?」
この男もサイがナマエをビッチ呼ばわりしたのを聞いていたようで、男がニヤニヤしながら聞いてきた。なんとなく悪気はなく興味本位で聞いてきているようだ。
「何もないですよ。会うの2回目ですし。」
「えー?じゃあなんであんなこと、」
「隊列を崩すな。」
ナマエと話していた男にネジが後ろを向かずにピシャリと言い放つと、男はすんません!と言ってナマエの後ろに戻った。
ナマエはネジを追いかけながら、ネジにまでサイのあだ名を聞かれてしまったことに落ち込んだ。
――ネジさんにはそんなふうに言われてること、知られたくなかったな……。
ネジはネジで、ナマエとシカマルの他人にはわからない雰囲気と、サイの言ったあだ名が気になっていた。なぜ気になるのかはネジ自身もよくわからなかった。
× | top | ×