例年通り1年生は湖から、2年生以上は引く馬のいない馬車でホグワーツ城の大広間へと集合した。大広間へ入る前の正面玄関でハリーたちと出くわしたナマエは、挨拶して一緒の席に着いた。

「ナマエったらどこにいたの?空きのコンパートメントが全然なかったんだよ。ナマエなら早く来て取っておいてくれると思ってたのに。」

「わたしも今日は到着が遅かったから、スーザンたちのコンパートメントにお邪魔してたの。」

 ハリーが不満げにナマエへ言うが、毎年必ず早朝から来ると決めているわけではないのでナマエはあっけらかんと答えた。

「スーザン?」

「ハッフルパフの同級生よ。」

「ナマエは相変わらず顔が広いな。ルーナも知ってた?」

「ルーナ?」

 ナマエは寮を問わず自分の友人たちの顔と名前を思い浮かべたが、ルーナという知り合いはいなかった。

「知らないわ。後輩?」

「レイブンクローの4年生よ。ルーニ……ルーナは。」

 ハーマイオニーが答えたので、みんな知ってる目立つ子なのかとナマエは解釈した。

「その子と同じコンパートメントで来たの?」

 ハリーたちを遠くからホームで見かけた時はシリウスたちとの別れを惜しんでいたので、おそらく出発時刻のギリギリまで列車内へは入らなかったんだろうと思った。
 ナマエがそのまま正面のハーマイオニーへ聞くと、「そうだよ」と隣のハリーから返事が来た。

「?そうなの。」

 少し違和感を感じていると、ハーマイオニーが言いづらそうにアー……と説明を始めた。

「わたしたち――わたしとロンは別のコンパートメントだったのよ。監督生用の。」

 ロンもハーマイオニーの言葉にうんと頷いた。それでああ、とナマエは納得した。ハリーがやや不満げな態度だったのも頷ける。自分だって夏休み中にドラコへぶつけるくらいふて腐れていたのだから。
 ナマエがそうだったのねと言うと、ロンとハーマイオニーが監督生のコンパートメントでのことを話し始めたので、ハリーの肘をちょんと自分のでつついた。

「?」

 ――わたしも同じ気持ち。

 ナマエがその気持ちを込めて肩をすくめて微笑む。伝わるかと心配したが、ハリーはすぐわかったようで少し悲しげな顔で笑って頷いた。

「あの人、誰?」

 ハーマイオニーが教職員テーブルの中央を指した。ずんぐりした体型の全身ピンク色をまとったおばさん魔女だ。
 ハリーがその魔女のアマガエルに似た顔をしげしげと見つめて、急にあっ、と思い出したように言った。

「アンブリッジだ!ファッジの下で働いてる!」

 つまりは魔法省の人間であるということだ。
 ハリーの言葉を聞いて、ナマエはゴブレットを傾けるアンブリッジを見つめた。なんだかよくないことが起きるようなそんな予感がした。





 恐る恐るといった様子で1年生たちが大広間へ入ってくると、用意された組分け帽子が高らかに歌い出す。
 帽子が歌う歌詞は警告のような言葉がのっていた。ハリーはその意味を噛み砕いた。

「それで、帽子は全寮生徒同士仲良くなれって?」

 嫌そうにドラコが偉そうに座るスリザリンのテーブルを見ながら言った。ほとんど首なしニックがさあどうでしょうねと首をかしげて、ふわりとロンへぶつかりながら去っていった。

「スリザリンと仲良くしろって?そりゃ無理だよ!」

 首なしニックに直撃されて嫌そうな顔をしていたロンが、さらに嫌そうな顔を深めた。ただ――と言葉を続ける。

「ハッフルパフが占領するコンパートメントに堂々といられるナマエならできるのかな。」

「どうかしら……。」

 ナマエはチラとスリザリンの席を見て、いつも嫌な絡み方をしてくる上級生と、最後にクラッブとゴイルの間に座るドラコを見た。
 クラッブとゴイルの間に挟まれると華奢で小柄に見えるが、軽々とナマエのトランクを持ち上げて列車の入口で向かい合ったドラコは、見上げるくらい背丈がある。5年生になってまた背が伸びたようだった。

「ナマエ?」

 ぼーっとするナマエの目の前をヒラヒラとハリーの手が踊った。

「あ……いえ、わたしはどこの寮とかそういうのはあまり気にしていないわ。どの寮でも、好きな人は好きよ。」

 すぐにダンブルドアの話が始まり、新任のアンブリッジの紹介と演説がダラダラと続いたが、ナマエは教師の方を見ながら、先ほど自分の口から出た言葉の意味を考えた。

 ――嫌い、ではない。

「古き慣習のいくつかは維持され、当然そうあるべきですが、陳腐化し――」

 アンブリッジが嘘くさい笑顔で生徒たちを見渡す。ナマエは言葉を受け流しながら、ドラコをもう一度見つめた。ドラコはコソコソと隣のクラッブに何やら言葉をかけているようだった。アンブリッジのことを話しているようだった。

「保持すべきは保持し、正すべきは正す。禁ずべきやり方とわかったものは――」

 ナマエの視線を感じたのか、ドラコがナマエをチラと見たので目が合った。ドラコはさっと目をそらしたが、嫌なそらし方ではないように思えた。

 ――むしろ、わりと……好き。

 ナマエはようやくドラコから視線を外した。まだ演説を続けるアンブリッジを見て、この人は何の話をしていたんだろうと思った。

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