スタンド・バイ・ミー | ナノ 02


 シカマルと出会った時、ナマエは16歳だった。六代目火影が退任し、七代目火影が就任して1年ほど経った頃だ。シカマルは六代目火影の元で火影補佐の勉強をし、七代目火影の補佐を始めてからは、外交以外でほとんど里外へ任務に行くことは少なくなっていた。しかし、その任務は自分以上の適任者が不在だと判断し、自ら赴くことを七代目火影であるナルトに志願したのだった。

 任務は、上忍のシカマルと、上忍になったばかりの木ノ葉丸、そして中忍のナマエのスリーマンセルだった。
 任務内容は、最近不穏な動きを見せている田の国の組織への潜入および情報収集。田の国には音隠れの里があり、大蛇丸の元部下で木ノ葉隠れの里の抜忍が絡んでいる可能性があった。

「隣接する国や近くで捕まった抜忍が、非合法な薬物や武器を大量に持っていたことを考えると、この組織が製造して売っ払ってる可能性が高い。金や武器を集めた抜忍組織がまた木ノ葉崩しなんて考えてたらシャレになんねーからな。」

 今回の小隊の小隊長であるシカマルは、移動の休憩地点で簡単に説明した。

「相手がどれほどの組織なのか、なんの目的なのか、正直わからねーことが多すぎる。だから今回の任務の目的は組織壊滅じゃあねえ。組織のリーダー、人員、その能力、目的、拠点などの情報をできる限り集めて木ノ葉へ持ち帰ること。それが俺たちの任務だ。」

 田の国への道中、夜になったので洞穴で焚き火をしながら、シカマルの作戦を木ノ葉とナマエはうんうんと聞いていた。

「その組織の噂はどこからなんですか?」

「サスケだ。たまたま別のことを探っていた時、小耳に挟んだらしい不確かな情報だ。取り越し苦労ってんならそれで構わねえんだが、本当にそんな組織があるのならかなりでかいかもしれねえ。組織壊滅にはこのくらい慎重にってことで、今回は小隊での任務だ。」

 木ノ葉丸の質問に、シカマルは答えた。シカマルの話を聞きながら、ナマエは、もしこれが本当だったらとても大きな問題だと思った。上忍2人の足を引っ張らないようにしなければと緊張した面持ちで静かに話を聞いた。
 そんなナマエの緊張が伝わったのか、シカマルはぽんとナマエの肩に手を置いて笑った。
 
「ナマエと組むのは初めてだが、いつも報告書を読んでる。ナマエが選ばれたのは潜入任務にお前以上の成果を持って帰ってくるやつはそういねえからだ。リラックスして行こうぜ。」

「……はいっ!」

 ナマエは、火影の右腕である木ノ葉有数の忍からそんなふうに言ってもらえて嬉しくて頬が熱くなった。そしやる気もみなぎった。



 まる2日移動し、3日目の昼間には田の国に到着する予定だ。そろそろ任務でも雷車での移動が実現する時勢だが、今回の任務には当てはまらなかった。移動と野宿の間に連携を確認したり話をしていくうちに、シカマルと木ノ葉丸とナマエは連帯感が生まれていった。世界全体が昔に比べ平和となったため、道中危険が及ぶこともなかった。

「シカマルさんが任務で木ノ葉を離れるの久しぶりじゃないですか?」

 連携を確認するために林の中で軽く演習をした後、木ノ葉丸が汗を拭いながら何気なくシカマルに問うた。

「あーそうだな。火影補佐ってので書類漬けだったし、家のこともあってなかなかな。鈍っちまってるぜ。」

「あー……。」

 ナマエは木ノ葉丸がした微妙なリアクションの真意がわからなかった。家のことというのは奈良家で何かがあったのだろうかとナマエは考えた。実際は、シカマルは嫁を亡くしシングルファザーになったことだったのだが、この時のナマエは知らなかった。

「鈍ってなんかないですよ!シカマルさん、常にわたしの動きに合わせて調整してくださってますよね。」

 体を動かした後なのでナマエが息を吐きながら言うと、シカマルは照れたように笑った。

「それにしても、ナマエは里で見かけないよな。こんな可愛……えっと、優秀なくのいちがいたの知らなかったぞコレ。」

 木ノ葉丸が頬を薄く染めて、頭を掻きながら言うと、ナマエはふふっと笑った。

「ありがとうございます。潜入の長期任務に出てることが続いていたので。」

「実力と功績的にもナマエは特別上忍になるだろうからな。」

 シカマルからもお墨付きももらい、ナマエは幸せな気持ちになった。シカマルの褒め言葉には下心を感じず、爽やかでかっこいい大人だと思った。もちろん、木ノ葉丸の褒め言葉も嬉しいのだが。



 長期移動が終わり、ようやく田の国に到着した。シカマルの機転でうまく行商人の中に紛れて潜入ができたので、ここからが本格的な任務のスタートだ。シカマルは全体を見てくると言い、木ノ葉丸は3人の拠点となる宿を取りに行く。ナマエは古着屋へ向かった。

 木ノ葉丸が取った宿で集合すると、最後に戻ってきたナマエの姿を見て2人は驚いた。ナマエは田の国の文化に倣ったミニのワンピースを着て登場した。朱色のそれは身体のラインを強調し、真っ白な肌のナマエによく似合っていた。黒のハイヒールに、小さなバッグ、ヘアメイクを直した状態のナマエは、忍とは思えない「少し派手な美女」だった。

「すみません、市場調査もしていて少し遅くなりました。」

 男性陣の熱い視線に気付くことなく、遅れたことに内心焦っていたナマエは、急いで忍具を取り出して装着していった。後ろを向いているとは言え、ミニ丈のスカートを少し捲って太ももに忍具を仕込んでいく姿は目に毒だった。

「ナマエ、すごいな。想像以上だ。」

 木ノ葉丸もぽーっとするのを辞めて忍具の確認をしながら、くのいちとして完璧な変装を賞賛した。

「ありがとうございます。どのくらい町の女性に溶け込めるかが任務成功の鍵なんです。」

 ナマエは詳しく話さなかったが、あからさまに誘惑するような挑発的な女性は逆に怪しまれることもあるので、やりすぎないことに注意していた。あくまで一般女性の中で少し目立つくらい。胸の谷間の強調や真っ赤なルージュは避けて、自分の魅力でおしゃれを楽しむ普通の女の子に化けるのが潜入のコツだ。

 これからの段取りを最終確認すると、シカマルは頭の中でシミュレーションをしておけと指示を出した。2人は「はい」と返事をし、木ノ葉丸が先に宿を出た。よし、と気合いを入れてナマエも出発しようかと思った時、不意にシカマルがナマエの腕を掴んだ。

「言い忘れたが……って細えな。」

 シカマルはぱっと手を話すと手短に要件を述べた。ナマエはこくこくと頷いたが、内心はドキドキしていた。シカマルの触れた手の温度が心地良かった。頭の中でしていたシミュレーションが一瞬吹っ飛びそうになったので、慌てて脳内で早送りのシミュレーションを行った。
 
 ナマエは体質的に鍛えても筋肉が外側につくことがなく、インナーマッスルが鍛えられるのだった。そのため、忍だとわかるような外見にはならず、潜入に向いている要因でもあった。シカマルに細いと言われて、動揺してベラベラとこの体質のことを話しそうになったが、口を結んでぐっと耐えた。

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