スタンド・バイ・ミー | ナノ 03


 任務は、シカマルの計画と3人の実行力と運も味方につけ順調に進んでいった。シカマルは単独で調べ、木ノ葉丸はナマエを遠くから観察し護衛。そして、ナマエはシカマルの調べでわかった金持ちが集まる闇の社交場への切符を余裕で手に入れた。

 闇の社交場には厳重なセキュリティがあり、ナマエ1人で行く他に選択肢はなかった。ナマエは「慣れているから大丈夫」と2人を安心させて、見事に組織の幹部と会う約束をして帰ってきた。幹部は忍ではなく、典型的な成金の男だったので、ナマエは少し気を緩めた。

「明日がこの任務の正念場だ。木ノ葉丸、ナマエ、しっかり頼むぜ。」

「「はい!」」

 再び木ノ葉丸とナマエは気合いを入れ直して、その日は就寝した。ナマエは眠りにつく前、もうすぐ任務が終わることをなぜか少し寂しく思った。木ノ葉丸はすごくいい人だし、何よりシカマルが優しく優秀でかっこいい。この任務の成功は明日の自分にかかっていると言っても過言ではない。2人のためにも頑張らなくちゃと目を瞑った。

 翌日。ナマエが手引きした木ノ葉丸とシカマルが組織のアジトの屋根裏などを使って調査を進める中、ナマエは幹部の男にアジトを案内されていた。道中、仲間の幹部のことをそれとなく聞き出しながら、男のことを褒めそやした。この男から聞き出せることはなさそうだし、この男自身がそうとう自分に惚れ込んでいるのがわかったので、そろそろ引く頃だろうとナマエは内心思った。この男は「ボスにいい女を献上しよう」という気で自分に構っているのではないと思ったからだ。

 ――たった数日でわたしに惚れ込むなんてバカみたい。

 ナマエは自分に好意を向ける男たちが好きではなかった。その好意の上で仕事が成り立っているので文句は言えないが、自分の演技と振る舞いで、手のひらで転がされている男たちは滑稽だった。そして、何より自分を蹂躙しようと隠しきれない欲望が恐ろしかった。

 ――でも、わたしもたった数日でシカマルさんを……。

 ナマエの思考はそこで途切れた。狭い廊下を歩いていたら、突然壁に身体を押し付けられて、その壁がくるりと反転して謎の空間に身体が転がっていた。薄暗い部屋には甘い香りが漂っていて、まずいと思った時にはかなりその香りを吸ってしまっていた。

「この部屋はボスにも秘密にしてるから、誰も来ないよ。安心してね……。」

 ナマエは甘い香りでうまく働かない脳を無理やり回転させた。

 ――油断した。どうしよう。息を止めて。忍だとはバレてない。甘い香り。身体が熱い。怖い。幻術を。チャクラが練れない。忍具を。起爆札。潜入中だ。ふわふわする。どうしよう。助けて。

 働かない頭で、男にキスをされながら懸命に考えた。渾身の力でチャクラを練って、ナマエの胸に手を置く男の腕を掴んだのと、男がピタリと動かなくなるのは同時だった。

「ナマエ、遅くなって悪い。」

 ――シカマルさん、ここで息吸っちゃだめです……。シカマルさん……。

 シカマルは充満する甘い香りに顔をしかめた。すぐに気絶した男の様子を確認して、男の下敷きになっているナマエを抱えると、屋根裏を使って外の林へと移動した。

「ナマエっ大丈夫か?」

「はぁ……はぁっシカっ……はっ、」

 外へ移動すると、ナマエは自分があの甘い香りの空気以外を受け付けないことに気付いた。息がうまく吸えずに肩だけが震える。それがあの充満した薬物の特性であることを後ほど知った。

「くそっ……」

 シカマルはナマエを地面に下ろすと、気道を確保して人工呼吸した。あの男がナマエに口づけていたのでおそらく自分もここで倒れることはないだろうと考えた。

 ――あのアジトのボスは下っ端です。ボスは雷の抜忍で、幹部にも3人抜忍がいます。あの部屋で寝かせておけばあの男は大丈夫です。本部にはビンゴブックに載ってる抜忍が少なくとも5人います。本部の場所は……。

 ナマエは自分の状況が把握できないほど混乱していたので、死ぬかもしれないと手に入れた情報を言葉にしようとしたが、音にはなっていないようだった。少しすると、ようやくそのことがわかるほど思考がクリアになっていった。

 ――シカマルさんに口を塞がれてる。

 ナマエの意識が戻ってきたのがわかったのか、シカマルは顔を離そうとした。

 ――シカマルさん。好き。好きです。

 ナマエはシカマルの首に腕を回して、そのまま引き寄せて口づけていた。身体が熱くて、湿ったシカマルの唇が冷たくて気持ちよかった。下唇を甘く噛み、舌を差し込むとピクリとシカマルの身体が動いた。自分の腿の間にあるシカマルの脚を挟むと、身体の熱が多少誤魔化されるような気がした。

「んっ……シカマ……ん、す……。」

 ナマエはそこで意識を手離した。



「ん、……あれ……?」

「ナマエ!シカマルさん、ナマエが目を覚ましました!」

「よかった……。」

 ナマエが意識を取り戻すと、そこは田の国の宿の布団の上だった。

「そうだ!わたしっ……痛ぁ……」

 起き上がると、頭の痛さと目眩でクラクラした。

「まだ寝ておけ。まだ任務中なんでこの国の病院で診てもらうわけにいかなかったからよ。まー無事で良かった。」

 シカマルがナマエに向かってニッと笑うと、ナマエはぽーっとして、何かを思い出しそうになった。

「あっ!アジトで得た情報があります!」

「仕事熱心なのはいいが……安静にしておけ。あいつらの使ってた薬物はかなり強力だった。ナマエはかなり食らってたしな。」

「すみません……。シカマルさん、木ノ葉丸さんも……助けてくれてありがとうございます。」

 ナマエはようやく意識を失う前のことを思い出した。自分が油断したところをシカマルに助けてもらったのだった。それで……。

 ――シカマルさんにキス、しなかった……?

「気にすんなって。催眠効果の他に経絡系を刺激する強い成分が入ってるようだったし、ナマエはほぼ丸腰だったんだ。」

 木ノ葉丸は催眠効果だと思っているようだが、食らったナマエにはわかっていた。あれは忍がチャクラさえ練れなくなる強力な催淫効果があったことを。

「そうだ……助けるのが遅くなって悪かった。」

 シカマルは申し訳なさそうな顔でナマエに謝った。

「そんなことっ!全然ないです。むしろ……ごめんなさい。わたしのせいで任務に失敗するところでした。」

 ナマエは場違いにもシカマルとのキスを思い出して首が熱くなるのを感じたが、申し訳なさが勝ったのでしゅんとした。

 ナマエは自分の失敗を取り返すように、得た情報を巻物に記していった。シカマルと木ノ葉丸には止められたが、ナマエの気持ちを汲んで折れてくれた。この時ナマエはまだ身体の熱が完全に抜けていたわけではなかったが、寝ているだけより何かしていたほうが気が紛れると思い、邪念を振り払って情報を思い出した。ナマエの情報は、シカマルが想像するより詳細でまとめ方も素晴らしいものだった。

「よし、これだけあれば、本部まで一網打尽にできるぞ。あとは、俺らの姿を見た幹部の男を回収すりゃ……。」

「あの男なら大丈夫です。なんとかチャクラを練れたので、幻術をかけておきました。それにあの部屋は自分以外知らないと言っていたので、他に勘づかれることはないかと思います。」

 あの男は今ごろ隠し部屋でナマエとイチャイチャする幻術を見ているはずだ。彼に幻術返しの才はなさそうだし、幹部の中でも下っ端の男が何日か姿を見せなくても問題は起こらなそうだった。もちろん、ナマエは自分の存在をあの男以外に知られてはいない。

 ナマエが巻物をくるりと巻いてシカマルに渡すと、シカマルは驚いていた。

「さすがだな。」

 シカマルはぽんとナマエの頭を撫でると、巻物を受け取った。純粋にナマエは嬉しく思ったが、自分の記憶が正しければキスをしているのに、シカマルの真意はまったく読めなかった。それほどまでにシカマルは普通に振る舞った。

 それから、ナマエの体力が回復して火の国へ戻った。移動中や野宿中もシカマルは「かなり普通」だった。ナマエは自分が都合のいい夢を見ていたのかとも思ったが、それにしては鮮明に覚えていた。ナマエは自分からキスしたのは初めてだったし、自分とキスして何事もなく振る舞う男性に出会ったことがなかったので、なおさら動揺した。これが大人というものなのかとも考えた。

 任務は無事成功した。シカマル小隊の情報は非常に役に立ち、すぐさま3小隊が送り込まれた。前情報が役に立ち、ほぼ被害なく組織を壊滅させることに成功したと木ノ葉丸がナマエに伝えてくれた。

「任務成功の打ち上げしないか?」

「はい、ぜひ。」

 木ノ葉丸は組織壊滅の任務にも引き続き携わっていたので、帰国してからナマエを誘った。二つ返事だったことに内心木ノ葉丸はガッツポーズした。待ち合わせ場所には木ノ葉丸の姿しかなく、当然のように木ノ葉丸はナマエが到着すると店へ案内した。シカマルがいないことに内心がっかりしながらも、木ノ葉丸との食事を楽しんだ。ナマエが木ノ葉丸に16歳なのでお酒が飲めませんと伝えると、たいそう驚かれた。

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