スタンド・バイ・ミー | ナノ 番外編3


 シカマルへ気持ちを伝えたはいいものの、ナマエとシカマルは仕事での接点は少なく、当分アプローチどころか会うことさえないだろうとナマエは考えていた。

 ――少しでも一緒にいる時間を増やして、ガンガン攻めたい……!

 ナマエは少しでもシカマルとの接点を増やそうと思った。具体的にどうするか決めあぐねていたが、ストーカーのごとくシカマルを見つけ次第話しかけてデートを取り付けよう。
 
 4年間見つめるだけの片思いをしていた頃よりは一歩前進してると前向きな気持ちのナマエは、告白した翌日に火影邸へと呼ばれていた。

「け、決してストーカーではございません。」

「わかってるよ、俺たちが呼んだんだからな。」

 ナマエが火影室の前でシカマルと遭遇すると、ストーカーのごとく追いかけようと思っていた気持ちを見透かされた気になって慌てて否定した。杞憂だった。

「ほら入れ。中で説明する。」

 シカマルは火影室への扉を開けてナマエを見て微笑んだ。相変わらず素敵だと思うのだが、ナマエは少しシカマルの態度を残念に思った。

 ――昨日は少しシカマルさんの余裕を崩せたと思ったんだけどな……。やっぱりすぐ戻っちゃうか。

 シカマルは大人だった。仕事の場で告白しただのされただのの甘い雰囲気を持ち込むような男ではなかった。ナマエはすっかり振り出しに戻ったような気分で残念に思った。

「ナマエ、今日はありがとうな。実はこんなこと頼むのも悪いとは思ったんだが――」

 ナルトから与えられた任務はたしかにいつもとはまるで違った内容だった。
 なんでも電子化機械化の流れで、大切な情報や書類を一部電子化して保存する、いわゆるIT革命が起きているらしい。カタスケ指導のもとシステムが組み込まれ作業に追われているそうなのだが、どうも人手が足りずナマエにも声をかけたそうだ。

「コノキがナマエの優秀さを褒めていてな。作業が早くて正確で助かると。」

 シカマルがナルトの説明に補足した。なぜ潜入捜索の特別上忍の自分が?と思った疑問を解消してくれた。火影室雑務のコノキに褒められているだけとわかりつつも、シカマルにも褒められているような気分になりナマエも悪い気はしなかった。

「それとだな、ナマエに頼んだ理由はもう1つある。」

 ナルトがそう言うと、火影の扉がガチャリと開いた。ナマエが振り返るとそこにはサラダやチョウチョウなど知り合いの下忍たちがいた。

「ナマエ先生じゃーん!火影様も!やっほー!」

 チョウチョウが先頭で手を振る。下忍たちやどうやら現役のアカデミー生もいるようで、数十人がぞろぞろと入ってきた。

「実は、ほんっとに人手が足りてなくてよ。下忍やアカデミーの子どもたちにも校外学習ってことで手伝ってもらうことにしたんだ。」

 ナルトが頭をかきながら困った顔で言った。子どもたちは頭が柔らかいしゲームなどで機械にも強い。頭が堅い大人にやらせるより効率が良さそうだ。きっと校外学習として手伝いをさせるように思いついたのはシカマルだろうとナマエは思った。

「なるほど。それでこの子たちと面識のあるわたしが指揮をとるということですね。」

 ナマエはアカデミー生のくのいちクラスで教鞭をとっていたこともあった。くのいちクラスの女の子たちのことはよく知っているし、子どもたちをまとめるのに適役だろう。

 ――ほんとシカマルさんってば人遣いが荒いんだから……。

 ナマエがチラッとシカマルを見ると、その思いが通じたのか困ったように笑っていた。ナマエは可愛い笑顔だからとすぐに許した。

「じゃあ早速で悪いけどナマエ、みんな、頼むな。」

 じゃあコノキ後はよろしくとシカマルが言うと、ナマエたちは資料室に移動した。



 ナマエと子どもたちはコノキから説明を受け作業を始めた。パソコンやゲームくらいはナマエも使うが、初めて見る装置にドキドキした。それでも使ってしまえば意外と簡単で、ナマエも子どもたちも黙々と作業した。子どもたちの担当分けはナマエがし、時折様子を見ては自分も作業した。

「サラダ早いね。さすが。」

 ナマエがサラダをこっそり褒めて撫でると、サラダは当然ですと言ったが嬉しそうだった。

「ナマエ先生ー!」

「どうしたの?」

「こいつがナマエ先生に彼氏いるか聞けってうるせーの!」

「はー?お前だろ!」

「……。」

 どうやらアカデミーの男の子たちは集中力が切れてきてしまっているようだ。単純作業を友だちとやっていたらそうなるのも仕方ないのだが。ナマエはやれやれと思いながら、男の子たちの輪の中に入って簡単な作業を振っていった。

「ちなみにナマエ先生は彼氏がいません。」

「まじ?ナマエ先生結婚適齢期だろ?」

「ナマエ先生モテねーんじゃん!」

 男の子たちがギャハハとナマエをからかうが、ナマエは手元の作業を止めさせずに話を続けた。

「今は結婚適齢期もどんどん遅くなってるからまだセーフよ。ナマエ先生は理想が高いの。」

「はー?先生ハタチだろ?ババアじゃん!」

「えー、ナマエ先生どんな人が好きなんですか?」

 騒がしい男子にババア呼ばわりされたが、ナマエはぐっと堪えた。そうすると、隣のテーブルで作業をしていたアカデミー生の女の子が恋愛話に食いついてしまった。

 ――しまった。早々にこの話題を切り上げるべきだったか。

「恋バナ?わたしも聞きたい!」

「あーそうね、もうすぐお昼だし、それまで手を止めないでちょっとだけおしゃべりしようか。」

 子どもの集中力には限界があるので、ナマエはそろそろ仕方ないかと皆の手元が疎かにならないか注意しながら話に乗ることにした。

「まずは背が高くて、顔がかっこよくて、笑顔が可愛いでしょ。あと頭が良くて冷静で仕事ができる人がいいな。」

「それ完璧な人じゃん!」

「でもわたしもそんな人がいいなー。」

「そんなやついねーよ!」

 ナマエがシカマルを思い浮かべながら言うと、女子からは賛同、男子からは非難された。思いの外盛り上がってしまっている。

「あとは、辛い時そばにいてくれて、甘やかしてくれて褒めてくれる優しい人で、この里やまわりの人のことも考えられる視野の広い人!」

 ナマエの理想という名のシカマルの好きなところは止まらなかった。

「大人なのに少年っぽいようなところもあって、ひげが似合ってて、細身っぽく見えるけど意外と筋肉質というか抱きしめたくなるような……」

「ナマエ先生。」

 ナマエの口が止まらないので、さすがにサラダが止めに入った。アカデミーの子どもたちはナマエの熱弁をポカンと見ていた。ナマエは顔が赤くなるのを感じた。

「と、そんなくだらないこと言ってないで仕事仕事ー。」

 ナマエは手を懸命に動かすと、子どもたちのほうがやれやれといった感じで作業を進めてくれた。

「あーナマエ。キリが良いところで昼休憩にしてくれ。」

 シカマルが資料室まで来たのでナマエはぱっと立ち上がって、お昼にしよ!と子どもたちに声をかけ、戻ってくる時間を伝えた。子どもたちはやったー!と部屋から出ていった。

「シカマルさん、一緒にご飯行きませんか?」

 ナマエがシカマルに聞くと、シカマルはナマエから視線を外すと自身の首の後ろをかくように触った。心なしか頬が赤い気がした。

「あーいいけどよ。ナマエ、声が筒抜けだから気をつけろよ。」

 ナマエはぼっとシカマル以上に頬が赤くなるのを感じた。きっと理想の男性像を聞かれていてそれがシカマルのことだとバレている。
 ナマエは恥ずかしさのあまり両手で自分の顔を覆った。

「本当にすみません……。気をつけます。」

「まあ、とりあえず行こうぜ。」

 シカマルも満更ではない様子でナマエと一緒に資料室を出た。その様子を、まだ資料室にいたサラダとチョウチョウが見ていた。

「ナマエ先生の理想の男性って……」

「まさかぁ……。」

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