スタンド・バイ・ミー | ナノ 後日譚1


 本編完結後。何年後かの世界。
 全能はなく、大筒木をすべて根絶やしにしている設定。



 ナマエは自身が担当する下忍3人とわかれて、任務の報告をするために火影室へと向かった。簡単なDランク任務だったので火影直々に言うほどのことではないのだが、そろそろ中忍試験も迫っているので、推薦するか否かを含め近況を報告しに行く。
 
 大筒木の件が解決し、忍世界全体は平和になった。忍を志す者も昔に比べるとかなり減った。ナマエの時代でさえ減っていた時だったから、ひと昔前に比べたら忍の全体数はかなり少なくなったのだろう。それでも、私利私欲のための悪は0にならないし、忍の力は必要だ。
 
 ナマエは特別上忍のころからアカデミーで特別講師をしていたので、子どもたちや教育の仕事は好きだった。上忍に推薦された時は嬉しかったし、次世代の忍を守り育てる今の仕事が好きだ。実家の服屋は不定期だが開けて、毎日忙しくしている。もともと、忙しくしていることが好きな性分だった。

「失礼します。みょうじです。」

「おう、ナマエ。入るってばよ。」

「第2班について報告に参りました。」

 七代目火影は相変わらず多忙そうだ。機械化が進んで目まぐるしく変わる里を正しく導いている。そのそばには昔と変わらずシカマルの姿があった。

 ――相変わらずナイスミドルだわ。

 初恋の人であり、恋人の父親。少し複雑な関係だが、今ではすっかり良い上司と部下だ。本当は恋人の父親として――いずれは嫁ぎたいので――仲良くしておきたいところではあるのだが、恋人には少しも気を揉んでほしくないので、誤解のないよう慎んだ距離感で付き合っている。

「……報告は以上です。ルーキーですが、みんな根性も技術もあるので、わたしは中忍試験に推薦しようと思っています。」

「ああ。ナマエが言うならそれで良いと思うぜ。すっかり上忍として頼もしくなったな。」

「ありがとうございます。シカマルさん。」

 シカマルは相変わらず人を褒めて伸ばすのがうまいなあと思いながら、報告を終えたナマエはそろそろ失礼しようと会釈した。

「上忍の先輩として、新人のシカダイにもいろいろ教えてやってくれな。」

 ナルトがそう言うと、シカマルもナマエも「えっ」と声をそろえた。ナマエはまさかの「えっ」でシカマルは言うのかよの「えっ」だった。

「それってどういう……」

「ナルト、お前なあ。ナマエにはシカダイが直接言うだろ。」

 シカマルが呆れて、頭の後ろに手を置いた。ナルトはシカマルに言われてようやく自分の失態に気付いたようだった。

「あーわりぃ。つい。ナマエもシカダイも喜ぶと思って。」

 ナルトは目を細めて申し訳無さそうな顔をした。ナマエはその顔を見ると、13も年上のこの里の長を可愛いなと思ってしまう。ナルトにはそういう魅力がある。

「いえ。ただ思ったより早くて……びっくりしてます。さすがシカマルさんの息子ですね。」

「お前の恋人だろ。」

 ナマエとシカマルは目を合わせて笑った。



 ナマエは火影室から出ると、街へ出た。午後からは休みなので、ごちそうでも作ってシカダイをお祝いしようと考えた。お得意様である肉屋の主人のところでいい肉を買い、木ノ葉スーパーで野菜なども買おう。ホットプレートで焼くのもいいが、レストランのようなお祝いにふさわしい上品な料理でもいい。ナマエが献立を考えていると、山中花店の前で、いのとチョウチョウといのじんと出くわした。

「あーナマエ!シカダイのこと、聞いたわよ!」

「いのさん、こんにちは。」

「シカダイ超嬉しそうだったね!ナマエ先生もう会った?」

「まだなの。」

 ナマエは、ナルトが口を滑らせなくてもシカダイの口から初めて聞くのは無理だっただろうなと苦笑いした。意外にもこの中で一番デリカシーのなさそうないのじんだけが呆れてこちらを見ていた。いのじんと目を合わせて困ったように笑うと、ナマエは3人を置いて街を進んだ。

「ナルトから聞いたよ。シカダイ、上忍だって?優秀なカレシじゃない。」

「ナマエさん!シカダイのやつ、やりましたよ!聞きましたか?」

「ナマエ姉ちゃん、あいつ同期の中で中忍になるのも上忍になるのも一番だってよ!俺も上忍になりてー。」

 街では、カカシ、イワベエ、ボルトに会い、それぞれからシカダイが上忍になったことを聞いた。どうやらナマエよりほんの少し前にシカダイは同じルートを通っているらしく、ナマエはシカダイの後を追う形になっているようだった。

 ナマエはおしゃべりな人たちだなあと思いながら、自宅に着いた。扉を開けると中に人の気配がした。きっと、今自分が一番会いたい人だろう。

「シカダイ!」

「ナマエ、おかえり。」

「ただいま。」

 ナマエはキッチンに入ると、買ったものを冷蔵庫にしまっていった。いいお肉はまだ見られたくなかったので、ささっとやってしまう。シカダイはナマエがキッチンに入るのを見て、何か言おうと口を開いて、やめた。
 ナマエの家はすっかりシカダイの私物が増え、シカダイは自分の家に帰るよりナマエの家に帰ることのほうが多かった。シカダイが最近読んでいる古い戦法指南書はナマエの家に置きっぱなしだった。シカダイはそれを手に取って開いたが、内容が一切入ってこないのでまた置いた。

「シカダイ、早く言ってよ。」

「え!?」

 キッチンにいると思っていたナマエがいつの間にか隣にいて、シカダイはびっくりして後ずさった。ナマエは、自分に一番に報告してほしいと思っていたのに、いろんな人に先を越されて内心少し拗ねていたが、早くおめでとうを言いたい気持ちの方が大きかった。ナマエはシカダイの口から聞きたいと、シカダイの目をじっと見つめて待った。

「あー……、」

「……。」

「……結婚しよう。」

 シカダイはソファの裏のナマエから見えないところに隠していた花束を取り出してナマエに渡した。ナマエは固まっていた。

「あークソ、順番を間違えた。上忍になったんだ。だから、」

 シカダイは頭の後ろに手をやって恥ずかしそうに視線をそらした。ナマエは目の前の花束とシカダイの顔をじっと見ていた。

「する!絶対にする。」

 ナマエはぱっと笑顔になって花束を受け取った。そのままシカダイに抱きつくと、シカダイの首筋に頬をすりつけた。

「おめでとう、シカダイ。ずっと一緒にいようね。」

「ああ。ありがとう。」

 シカダイとナマエは目を合わせて、その後一度触れるだけのキスをした。ゆっくり離れて、体はくっつけたまま目を合わせて笑った。

「上忍になったらすぐ言おうと思っててよ。いのおばさんのところで慌てて買ってきた。まさかいのおばさんから聞いてたのか?」

「上忍になったことはいのさんからも七代目からもシカダイの同期からも聞いちゃったよ。」

「ったく。俺から言わせてくれよ。」

「シカマルさんも同じこと言ってた。」

 ナマエは感性まで親子そっくりだなと思った。

「とうとう親父の義娘になるところまできたな。」

「あのねえ、わたしはあなたのお嫁さんになりたいだけなんですけどっ。」

 2人は軽口を言い合って、顔を見合わせて笑った。

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