鈴木園子

 今朝の衝撃的事件から一変、授業は滞りなく進み、穏やかな日常が戻ってきた。最初は動揺していた蘭も、気にはなっているようだけど、平静を装えるくらいには落ち着いたみたい。蘭はこのままモヤモヤを抱えたままにしておくつもりみたいだけど、親友として、そんな蘭を見過ごすわけにはいかない。わたしの出番だ。
 新一くんと名前ちゃんは、業間休みに一言二言会話したと思ったら、お昼休みに2人で教室を出て行った。おそらく業間休みの間で、お昼を食べる約束をしていたんだろう。ガヤガヤとした教室内で、2人がお昼に出てったのを見た人はどのくらいいたのだろう。もちろんわたしも気付いたし、蘭も気付いていた。2人とも自分が目立つことにまったくの無頓着。そんなところが似ているし、2人のカリスマ性が感じられる。おそらく新一くんは、親が女優と有名作家だから、目立つことが当たり前すぎて、気にとめてないんだろう。#名前#ちゃんは、まわりの目とかを気にしてないし気付いてないってかんじ。2人とも理由は違っても通ずるところがあって、似てる。だから、危機なんだ。

「新一くん!ちょっと!」

 先に1人で教室に戻ってきた新一くんに、声をかける。蘭がトイレに行っていて絶好のタイミングだ。

「あんだよ……。」

 なんとなく言われることの心当たりがあるのか、歯切れの悪い口調だ。

「ちょっと来て!」

 わたしたちは生徒があまり通らない渡り廊下に来た。時間もないし、手短に話すしかない。

「単刀直入に言うけど、名前ちゃんとはどういう関係なの!?」

「どういうって……別にクラスメイトだろ……。」

「それは昨日までの話!わたしが言いたいことわかってるんでしょ!?」

「わあってるよ……でも別にどうともなってねえって。昨日の放課後と今朝たまたま会って話しただけだよ。」

「昨日と今日話しただけ!?それであんな空気出すわけ!?」

「……事件にも関心があるし、頭キレるし推理も当たる。今までそういうやつが近くにいなかったから、ちょっと興味あんだよ。」

 わたしはぐっと押し黙ってしまった。あの新一くんが「頭がキレる」と褒めるなんて。それに興味があるだなんて。ひょっとするとひょっとするの……?

「バーロー、あいつ好きなやついるって言ってたし、んなんじゃねえよ。」

 読まれた。

「新一くんは、どうなのよ!」

 そう聞くと、新一くんは少し驚いたが、すぐに呆れた顔をした。

「あのなあ、昨日今日でどうにもなんねえだろ普通。」

 その時、予鈴が鳴った。もう行かなければ午後の授業に間に合わなくなってしまう。タイムアップだ。

「……蘭にちゃんと、名前ちゃんとはそういうんじゃないって伝えなさいよ。」

「あいつは関係ねえだろ。」

 そう言って新一くんは立ち去った。会話を思い返してみると、結局すべてはぐらかされているような気がした。新一くんの真意はわからずじまいではないだろうか。名前ちゃんの好きな人っていうのは十中八九高木刑事だけど、じゃあ、新一くんは……?親友への報告はとりあえず保留にしなければ、と思い教室へ急いだ。

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