橙のたくらみ
ぎしり、とわたしが横になるソファーに体重がかかるのを感じた。目を開けると映る顔はまだ幼さのある少年を思わせるのに、その瞳は相変わらずギラギラと獲物をねらうコヨーテみたいに光っている。
「きいてよナマエ」
まだ少し眠かったが、彼がわたしの体の上に跨っていることを少しずつ理解した。別に特段驚くこともない。彼は知り合ってからずっとこうだ。横を歩いていれば手を繋いでくるし、特に意味もなく身を寄せてわたしの名前を呼んだ。二人でたまに一緒に眠ることもあった。それは本当に同じベッドでくっついて眠るだけで、男と女のそれではなかった。ナランチャはそういう子なのだ。
しかしわたしは彼を無邪気な少年とは思わない。嬉しいときは子供のように明るく笑っているが、彼はびっくりするくらい冷たい顔もした。そして、穏やかな子供時代なんて知らないであろう彼がどんな理由であれ身を寄せてくるのを、わたしは拒みたくはないのだ。
ぼんやりと覚醒する頭でわたしはいつもと違う彼の纏う空気を感じ始めていた。それはなんだか生ぬるい風に二人して体を包まれたように感じた。
「俺は何にも知らないんだ。教えて欲しいんだよ」
彼の手がわたしの耳を触った。思わず目を閉じて少し身動きをしてしまう。ナランチャは相変わらずギラギラとした眼でわたしを見下ろしている。
「算数なら明日教える約束でしょう」
「算数じゃあないんだよ」
彼は視線を合わせつつわたしの手をとって導いた。手のひらに硬いものが触れる。布越しでもその熱さがしっかりとわかった。本当はさっきから太ももにあたるそれをわたしは知っていた。それなのに彼の顔は相変わらず女の子のように可愛らしく端正なのだ。
「なぁ、教えてくれよ。俺に女のことを」
「…うそつきだねナランチャ」
彼はそんなのとっくに知ってるだろう。わたしの言葉に少し笑う彼が見えた。すぐにキスをされてそれは見えなくなってしまったが。脚の間に体を割り込ませ、ナランチャは自分の熱を持ったそれをわたしの脚の付け根に押し付けた。いくつかの布越しに刺激を与えられて思わず唇が離れた時に声が漏れる。
「いいだろ?教えてくれるだろ?俺をきみの中にいれてよナマエ」
抱えて持ち上げられたわたしの右脚にキスをおとして、甘えた低い声でナランチャがそう言った。わたしは変わらずギラギラとした眼から目を離せず、じんわりと下腹部に熱が集まるのを感じるのだった。