おい、デートしようぜ、と桑田に声をかけられたのは金曜日の放課後。言い回しに気を取られそうだが、要は買い物に付き合ってくれ、ということだ。桑田は今時の女子と同じくらい買い物に時間をかけるので、いわゆる今時じゃない女子としては遠慮したいのだけれど、なんだかんだあいつと過ごすのが楽しくて付き合ってしまう。 「なあなあ、これとかどうよ? マキシマムカッケーって感じ!?」 「はぁ〜?」 桑田がはしゃぎながら自分にあてがっているのは黒のジャケット。シックで大人っぽい雰囲気は確かにかっこいいけれど、正直桑田には似合わない。 考えたことを正直に伝えると、桑田は不服そうに唸りながら、今度はゆったりしたデザインのカーディガンを手にとった。 「じゃあこれとかどうよ?」 「桑田には似合わない」 「なんで!」 「せっかく鍛えてて体のラインがきれいなんだから、シルエットがある程度わかる服の方がいいでしょ」 「ん? お、おう…」 少し褒めてやれば、わかりやすいことに桑田の頬が緩む。単純なやつめ…。 「うっし、ならここには用はねえな、次のショップ行こうぜ!」 「は!? ちょ、ちょっと」 なんでそういうことを大声で言うの! 本当に信じられない、なんて失礼な奴なんだろう。こいつの裏表のないところは気に入っているけれど、こういう無神経なところがムカつく。 だけど、満面の笑みを浮かべてわたしの名前を呼ぶ桑田を見ていたら、なんだかどうでもよくなってしまった。どうせ聞かないだろうけど、後で注意しておこう、とため息をひとつ吐く。なんだかんだで、わたしはこいつの笑顔に弱いのだ。 20131013 |