たわむれを | ナノ



場の盛り上がりが最高潮に達していると、江ノ島ちゃんが黒い笑顔と「じゃーん!」という効果音と共になにやら箱を取り出した。

「くじ引き?」
「そそ! 石丸とかさー、全然歌ってないじゃん? この中にハートを書いた紙が一枚だけ入ってるからさ、それを引いた人が歌うってことで!」

確かに歌う人は偏ってるし、いい制度かもしれないな…。青ざめてる石丸くんには申し訳ないけど、石丸くんや大神さんの歌も、少し聞いてみたい。

はっきりとした反対意見は出ず、江ノ島ちゃんの提案は早速行われることになった。ソファの座る順に引いていく。箱に手を突っ込み引き出してみたが、わたしが引いたのは白紙だった。ちょっとだけ安堵。

「あ…私……」
「マジで!? むくろちゃんかよ!」

おずおずと手を上げたのは戦刃さんだった。そういえば戦刃さんも歌ってなかったような…。運も残念! と爆笑している江ノ島ちゃんの脇で申し訳なさそうに戦刃さんが入れたのが童謡だったものだから、その笑い声はさらに高く大きくなった。
戦刃さんの歌唱力はさておき、歌声は思った以上にかわいらしかった。

「ハ〜笑った笑った…。次行こ! 次!」
「次は…オレじゃねえか!」

そう声を張ったのは大和田くん。兄弟に回った方がおもしろいだろうによおとぼやきつつ入れた曲はやっぱり尾崎だった。好きそうだけど…予想を裏切らないな…。

(しかし、大和田くんって案外歌うまいな)

山田くんが盛り上げ、不二咲さんが手拍子を打ち、石丸くんが拍手を贈る。全体的に賑やかに大和田くんの歌唱が終わったあとでそう思った。うまいとは言っても超高校級とはもちろん言えないし、さらに言えば同じ男子の中でも葉隠くんとかの方がわかりやすく上手なんだけど、明け透けに言ってしまうと、大和田くんの素直な歌い方がわたしの好みだったのだ。
思わず石丸くんに便乗するように拍手を贈ると、大和田くんははにかんだ。あ、大和田くんの笑顔を見るの、二回目だ。



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