たわむれを | ナノ



今わたしは選択を迫られている。

一日も後半、午後の授業になると、昼飯後の満腹感で眠気に抗いがたくなる。それは超高校級だなんて称される希望ヶ峰学園の生徒だって例外ではない。現在午後一発目の四限、現国の授業では、クラスの五分の一ほどが夢の国へ旅立っているようだった。

あいにく、つい先ほどまで教務室へ遅れた課題を提出しに行っていたわたしは、その緊張感の余韻でまったく眠くない。
の、だけれど。わたしが悩んでいるのは、例によって例のごとく爆睡している大和田くんのことだった。

(起こすべきなんだろうか…)

今日の日付から、大和田くんがあてられるのは間違いないし、今のうちに起こしてあげた方がいいだろう。でも、気持ちよさそうな大和田くんを起こしたらキレられたりしないだろうか…。大和田くんが意外といい人なのは知ってるけど、けど!
悶々としているうちにも授業は進む。このままでは大和田くんは恥をかくことになるだろう(日常茶飯事かもしれないけど)。大和田くんには前に答えを教えてもらった恩もあるし、いや間違ってたけど、でも、うーん…。

ええい、ままよ! こう悩んでいても埒が明かない。わたしは思い切って「大和田くん、」と隣の席にささやきかけた。

「お、起きて…次あたるから……」
「…………」

起きやがらねえ…。見事に熟睡してる大和田くんに少し蝋梅する。いや、でも乗りかかった船だ、こうなったら最後まで…!
大和田くんの背中を少し力をこめて叩く。わたしの腕力なんてたかがしれてるとは思うが、それでも大和田くんを起こすことはできた。「んあ…?」

顔をあげ、ぼーっとしている大和田くんの自慢の髪型は崩れてしまっていて、表情もいつもより幼げに見えた。この大和田くんならあまり怖くない…! わたしは即座に大和田くんの教科書のページを「ここ、たぶん読めって言われるから、」と声を潜めて指し示す。わかったのかわかってないのか、大和田くんは焦点のあわない目でわたしの指の先を見つめていた。

「えー、じゃあ次は大和田か。続き読んで」

ぴったりなタイミングで先生が大和田くんを指名する。自分の名前を呼ばれたためか、途端に覚醒した様子の大和田くんがちょっと慌てながらわたしの指先を追った。

もう大丈夫だと安心して、座り直して頬杖をつく。なんだか今度はわたしが眠くなってきた…。きっとかけられることはないだろう、と自分勝手に結論付け、わたしはやってきた眠気に逆らわずに目を閉じた。




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