たわむれを | ナノ



まず最初に思ったのは、やった!だった。手にした紙切れに書かれた5番は、黒板の上で窓際の後ろから二番目の席を示している。寝てても本を読んでても先生からはバレにくい位置で、窓の外を眺めていれば時間も潰せるという優れた席である。苗木くんに負けず劣らずの幸運に我ながら得意げになる。
上機嫌でわたしの名前が5番に書き込まれた黒板を見つめて、次に思ったのはうそでしょ!? だった。わたしの座る5番の隣の席、つまり11番の位置には、でかでかと『大和田』という名前が記されていた。
大和田紋土くん。わたしが六月はじめにこの希望ヶ峰学園に転入してきてから約一ヶ月が経つけど、一度も会話したことはない。「超高校級の暴走族」なんて重々しい肩書きをもつ大和田くんは、見た目もまさに『そんな感じ』で、そもそも男子に話しかけるのが得意ではないわたしが接点を持てるはずがなかった。
くしゃり、幸せの5が書かれた紙を強く握りしめながら絶望感に浸る。きっとほとんど接点のないまま卒業することになるだろう、いやなってほしい、なってくださいとまで思っていた大和田くんと、まさか転入してきて初めての席替えで隣になるなんて。
性格が正反対なのに気が合うらしい石丸くんと話しながらバカ笑いする大和田くんを視界のはしに捉えて、彼には申し訳ないが頭を抱えた。

ちなみに一学期の期末テスト後に行われたこの席替え、夏休みを挟んで二学期の中間テスト後まで変わらないらしい。
勘弁してくれ……。


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