たわむれを | ナノ



バーベキューも食べ終わり、夜が更け、いよいよ花火大会が幕を開けた。とは言っても打ち上げ花火は残念ながら売ってなかったため、手持ち花火だけの少ししょぼいものだけど。
赤い花火を手にくるくると楽しそうに回る朝日奈ちゃんと、興味深そうに線香花火をする霧切ちゃん。

「朝日奈ちゃん、振り回すと危ないよ」
「だってー!せっかくだから思いっきり遊びたいじゃん!あはは」

もう火の消えかけたそれを、わたしに向けるふりをして笑う朝日奈ちゃん。大げさな手振りで振り払うようにしながらわたしもつられて笑ってしまう。周囲まで笑顔にできる女の子とは!わたしも彼女のようにありたいものである。
少し目を離しているうちに、霧切さんは苗木くんに線香花火の楽しみ方を教わりに行っていた。しゃがみ込み、ひとつの線香花火を覗き込む二人は見ていてほほえましい。舞園さんがいたら混ざりたかっただろうなあ。来れなかった人たちのことを思うとやっぱり物足りない心地がしてしまうので、もし迷惑でなければ、来年もこういったイベントを催したいものだ、と思った。わたしが主催でもよければ、だけれど。先ほどもらったたくさんの感謝の言葉を思い出して頬がゆるんでしまう。

野外で蝋燭に火をつけるとどうしても風にかき消されてしまう。今回は五個ほど灯しておいたが、それらがすべて消えてしまった頃、そろそろお開きかな、という雰囲気が漂い始めた。

「みょうじなまえ殿!火を頂戴しても構いませんね!」
「別にいいよ、どうぞ。腐川さんもよかったら」
「よっ、余計なお世話よ!」

片手で眼鏡をくいっと正しながらもう片方の手に持った花火を差し出してきた山田くんに、微苦笑しつつも手に持った花火から火を分ける。わたしのだいだい色の花火はまだ消える気配を見せない。ついでにと細い花火を手にうろうろしていた腐川さんに声をかけると、おせっかい焼きと罵られてしまった。調子に乗りました…。

「みょうじ、オレにも火分けてくんねえか」
「あ、」

そう言って大きな歩幅で近づいてきたのは大和田くんだった。バーベキュー前の会話以降、ずっと石丸くんと不二咲ちゃんと一緒にいたから、話す機会がほとんど無かったためか、随分久しぶりに話した気がする。
何故か胸が詰まってうまく言葉が出ず、「ど、どうぞ」と控えめに体を寄せる。大和田くんの腕が肩に触れそうなほど、近い。
大和田くんの持っていた花火がだいだい色の光に触れ、緑の火を放ち始める。ありがとな、と笑った大和田くんの顔は、花火に照らし出されて少し緑がかっていた。どういたしまして、とぎこちなく微笑みながら、痛いほど息が詰まる胸元に手を当てて、自分の逸る息遣いを自覚した。
わたしは、大和田くんに、恋をしているらしい。



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