寝場所を指定しましょう そんなこんなで突然やってきたわたしの彼氏(という設定のロボット)である真田と一緒に暮らすことになった。服を貸してくれとせびる真田に部屋着用のジャージを渡すと、ゆったりしたサイズのを買っておいたおかげで、ぴちぴちではあるもののなんとか着ることはできた。真田が着てきた上等なスーツはきちんとハンガーにかけておいてある。返品する前に一度クリーニングに出しておこう。 「あのさ、一応、来客用の布団とかはあるんだけど」 「あー?」寝る前に再び寝場所をどうするか聞いてみると、真田はきょとんとした顔をした後、笑いながら首を横に振った。「いいって言ったろ、そんなん。俺別に立ったままで苦痛に感じることねえし」 「いや〜、でもさ〜、なんか…」 「名前、こっち来てみ」 言われた通りに近寄ると、真田は短い襟足をかきあげて首の後ろを指し示した。色が薄くて見えにくいが、後ろ首のちょうど中央くらいにほくろがある。 「え、なに?ほくろがどうかしたの?」 「これ、スリープボタン」 「えっ」 「これ押したらそのままスリープモードになるし、朝設定した時間になったら自動的に起動して目覚まし代わりにもなるぜ」 「わあさすが最新鋭…じゃなくて、えっ」 「押してみろよ」 真田の目があまりに真っ直ぐこちらを見てくるので、渋々指示に従いほくろを少し強めに押す。 すると、真田の瞼が閉じ、そのまま動かなくなった。マジで立ったままだ…。 何歩か距離を置いて眺めてみると、壁に寄り添うように立ち尽くしたまま目を閉じ微動だにしない美少年の図、というのは、なかなかどうして精神に堪えるものがあった。 ありていに言うと不気味である。こんなオブジェがあっては気が気でない。 もう一回真田のほくろを押して起動させると、押し入れから布団と毛布を一式出してここで寝るようにと示す。必要ねえって、と言う真田は、どこか満更でもない様子だった。 |