呼び方を設定しましょう ある日やってきたサナダシュンペイ。漢字で書くと真田俊平、らしい。ロボットにも名前があるの?と聞くと、ロボットとはいえほとんど人間みたいなもんだぜと少しずれた回答をいただいた。識別番号の代わりなのだろう。 「名前は、あんまり歓迎ムードじゃねえな」 「なんで名前呼び捨てなの?」 普通ロボットと言ったら、ご主人様とかそう呼ぶもんじゃないのか? 真田はわたしの疑問に目を丸く見開くと、はっはっはっと豪快に笑い飛ばした。 「なにが悲しくて彼女のことをご主人様なんて呼ばなきゃならないんだよ」 「は、」 「ま、名前がそう呼ばれたいって言うなら、俺は別にそれでもいいけど。お姫様とかどう?」 「えっやだやだ絶対やだ!」 「だろ〜?」 真田はとても嬉しそうに長い腕を伸ばしてわたしの頭をかき混ぜた。言いくるめられた感がある。 「って、そういう話をしてるんじゃないから!今すぐ返品、返品するんで」 「はあ?なんでだよ、二週間無料なんだぜ?もう少しくらい置いといてくれよ」 不服そうに眉をひそめる真田。きれいな目元がうかがうようにわたしの目をまっすぐとらえてくる。うっ。思わず口をつぐんでしまう。寂しそうな真田のこの視線を無視できる女なんて、世界に一人だって存在しないだろう。 「で、でも、わたしの部屋、二人も住めるほど広くないんだけど」 「大丈夫だって。俺人間じゃないし」 「そういう問題じゃ…」 「そういう問題だよ、なんなら立ったままスリープモードにしてもらえばオッケー」 「…ハイテクだなあ」 「精密機械だからな」 右側の口の端を持ち上げた真田の表情はどこからどう見ても人間にしか見えなかったが、彼の言い分によると正真正銘ロボットらしい。 「とりあえずは服をなんとかしてえな、息が詰まる。名前、俺が着れるようなゆったりした服持ってない?」 「さすがにそんなにでかいのは…というか機械なのに息が詰まるとかあるわけ?」 「最新のロボットにはあんの」 腑に落ちない。 |