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「創っていい名前だよね」
「は?」

採集に精を出す日向をぼうっと見つめながらこぼすと、怪訝な顔で首を傾げられた。わたし自身なぜこんなことを言ったのかわからないし、何勝手に休んでるんだと咎めるような視線も最もだと思う。十分ほど前に駄々をこねて休憩したばっかだし。
制服が汚れるのを気にしながら近場の切り株に座ると、日向はしばらく動きそうもないと見たのかきちんとわたしに向き合うよう振り向いてくれた。

「創るって書いてはじめ。一番のはじめじゃないってところがすごくいい。あと日向創って語呂も字面もいいし」
「なんだそれ」

浅い理由だな、と日向が苦笑する。わたしがそんなに深いこと考えるわけないでしょ、と言うとまた確かに、とからかうように笑われて、なんだか憮然としてしまう。

「なに、褒めてんじゃんか。もうちょっと嬉しそうにしてよ!」
「そりゃ嬉しくないわけじゃないぞ? でも今は手を動かしてくれた方がもっと嬉しい」
「……はい」

日向の言う通りである。
渋々立ち上がり、腰を伸ばしながら動物はいないかとあたりを見回す。森は静かで、わたしと日向と風に木々がそよぐ音しかしなかった。本当に孤島なんだなあ。このよくわからない島に来てからなんだかんだ二週間が経ち、日向と言う気の置けない友人もできたけれど、どこか現実味がない日々を過ごしていると、こういうふとした瞬間我に返る。ここには何もない。何もないというと語弊がある、お店も娯楽施設も自然もなんでもあるけれど、でもここはわたしの暮らす場所ではないんだよな、なんて。
この長い長い修学旅行が終わるのはいったいいつになることやら。またぼーっとしていると、突然日向に頭を撫でられた。

「考え事なんてお前らしくないぞ」
「うん……」
「…なあ、ここから帰ったらどこか遊びに行こうぜ」
「えっ」

驚いて振り向くと、眉と目尻をほんの少しばかり下げて、とてもとても優しい顔をした日向がそこにはいた。

「映画館とか、ゲーセンとか、お前のオススメのカフェとか、教えてくれ」
「…そんなオシャレなもん知らないよ」
「確かに似合わないな」
「はあ!? そっちから言ったのに!」

わかってるよと思いっきり顔をしかめてぶさいくな表情を作るも、日向につられて笑ってしまう。そしたら日向が「今日初めて笑ったな」なんて言うものだから、なんだか気恥ずかしくてはにかんでしまった。このラフメイカーめ。


20131130

拍手用に書いたんだけど確かめたら日向はもう書いてましたね

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