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寒いのはそんなに苦手じゃない。隣を歩くこいつは不細工な巻き方のマフラーに顔をうずめながら、「おはよう白河くん」と笑って右手をひらり、振った。何も流れてないくせにはめたままのイヤホンをわざとらしく少し浮かせる。するとこいつはもう一度、今度はさっきより大きめの声で「おはよ!」と軽く俺の肩を叩いた。

嘘をついた。実はあまり寒いのは得意ではないが、寒くなるとこいつが朝使う電車が一本早くなるので、こうして朝練を終えて他の野球部員より足早に出てくる俺と、登校時間が一緒になる。学校に入ってからクラスに行くまで、そのままなんとなく隣を歩くのが常だった。寒いのは好きじゃないが、その時間は気に入っていた。



20140311
短編にしたかったけど没

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