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「ごめんね、一緒にいるって言ったのに」
「いいんだよ。僕が君の負担になるよりよほどいい」

南朋がいいなんて思ってないのはよく伝わってきた。他の人は騙せても、私にだけはわかった。南朋は嘘をつくとき、感情を隠すとき、頬の内側を噛みしめる癖がある。今南朋が浮かべている笑顔は一見完璧だったけど、その強張った口の端に、痛々しいほどの失望と悲しみが表れていた。

「僕が行く高校は、決して素行のいいところじゃないし、でも僕は甲子園に行く夢を諦められないし、君にも君の夢を叶えてほしいし、」
「うん、…うん」
「別に、気にしなくていいんだよ」

私の彼氏は一人で立ち上がれない。
そんな南朋のことを隣で支え続けるのは私しかいないと思っていたし、それくらいの覚悟はしていた。今日だって、本当は私は引き止めてもらいたかったのかも、自分の弱いところを柔らかく隠してしまう南朋に縋ってほしかったのかも。でも南朋のことを支えられるのは私だけじゃなかった。
それどころか、小学生の時に南朋と一緒に野球をやっていたという梅宮くんは、南朋の夢を叶えてあげることができる。私とは違う。高校が離れたら、私はきっと、南朋の車椅子を押さずとも済む生活に、肩の荷が下りたような感覚を覚えるんだろう。覚えてしまうんだろう。南朋もそれに気づいてて、そうしたらもう今の二人には二度と戻れないと気づいてて、だから、離れたくなかった。




20140311

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