The Second Day―PartV


………………。


誰かが側にいる気配を感じて目を覚ました。
「あ……」
ベッドの横に座っていたのは長門だった。その後ろに見える窓の外はもう薄暗い。放課後なのは間違いない。どうやらいつの間にか寝てたようだ。
「起きた?」
「長門…?何で――」
「涼宮ハルヒから聞いた。あなたの欠席が団活に支障を来すと判断し、あなたを治療することにした」
治療ね…ありがたいけど、そこまで体調が悪いわけじゃ――。
「肉体はそのよう」
“肉体は”、か…。つまり、全てお見通しってことか。
「そう」
潤みを含んだ瞳で俺をしっかり見つめ、
「あなたの悩みは杞憂」
長門はまずバッサリ切り捨てた。続いて、
「あなたが“あの事”についてどう思っていても、わたしがあなたに感謝していることに変わりはない」
そして長門は、遠慮がちに俺の手を取った。
「覚えてる?あの時病室であなたがわたしに言った言葉」

――くそったれと伝えろ。
情報統合思念体への怒りに任せて吐いた台詞。
その言葉が全てを変えた。長門はそう言った。
「あの時わたしは消滅するはずだった。それを阻止したのが、あなただった」
俺は何も言えなかった。覚悟していたのに、長門は俺を責めるどころかむしろ肯定していた。
「進む方向は同じ。わたしも、あなたも」
以前長門から聞いた言葉だ。
「その方向を決定したのは、他でもない、あなた。だからわたしはここにいられる」
そして、と長門は少し目を伏せ、
「通俗的な言葉で言うと、わたしはそのことを、“うれしい”、と思っている」
一瞬息が止まった。長門の口からそんな言葉が出るのは予想外だった。
「…だから、言わせてほしい」
長門は再び俺を見た。そして、

「ありがとう」

瞬間、俺は悟った。

――やっぱり、長門は長門だった。

どうやら俺はとんでもない思い違いをしていたらしい。SOS団員だとか文芸部員だとか、無感情だろうが内気だろうが、そんなことは関係なく、長門有希は長門有希であって、他の誰でもないんだ。
長門は小さいことなんか気にせず、全てを受け止めていた。そうでなければこんな姿にはならなかったはずだ。
胸に熱いものが込み上げる。俺の手を遠慮がちに握っている小さな姿が、これほど大きく見えたことはなかった。
思い出したように、長門は足元のバッグを開き、
「これ」
ペットボトルの緑茶を俺に差し出した。
「さっきのお礼」
「……ありがとよ」
俺は蓋を開け、緑茶を一気に飲み、――咽せたふりをして目頭が熱いのをごまかした。
背中に長門の手の温もりを感じつつ。

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