The Second Day―PartU


どうも調子が狂いっぱなしだ。長門をサポートするどころか、逆に長門に気を使わせちまってる。
午後の授業中は久しぶりに脳内会議を開いて反省会である。「やれやれ、みっともねぇな」そんなこと一人目に言われずとも分かってる。問題は何故ああも調子が狂ったのかってことだ。「そもそも、何故部室に行った?」二人目が詰問する。白状するが、よく分からん。特に目的があったわけじゃないが、どこをどう考えても、俺が部室に足を運んだ理由が思い浮かばな――「嘘はいけねぇな、俺よ」嘘だぁ?なら真実とやらを言ってみろ三人目よ。

「簡単だろ、お前は長門に会いたかったんだ。違うか?」

……はっ、馬鹿馬鹿しい。長門とならほとんど毎日顔を合わせてるじゃねぇか。何を今更――

「あぁ、俺が言ってんのは“その”長門じゃねぇ。“あの”長門だ。違うか?」

………………。
あの世界に残した、唯一とも呼べる未練。

――あの控えめな微笑をもう一度見たかった。

……確かにそうかもしれない。だが、
「認めろ。それが望みだったんだろ?夢にまで見たあの微笑を――」
「待ちやがれ」
厳しめの口調で乱入したのは四人目だ。
「つまりそれを認めるっつーことは、アレは嘘か?」アレ?アレって何だ?「お前自身が、その長門に向かって吐いた言葉だ。まさか忘れたわけじゃねぇよな?」俺は記憶を辿る。そうだ。十二月十八日早朝。眼鏡をかけた文芸部員に、俺は何て言った?

――すまない、長門。俺は今のお前じゃなくて、今までの長門が好きなんだ。

そう思ったからこそ、俺はこの世界に戻ってきて、そして長門は無表情かつ無感情なんじゃないのか?あの後俺は情報統合思念体に長門にもっとまともな性格を与えてやれなどと怒りを抱いていたが、そんな長門を望んだのは紛れもない俺だ。

「身勝手じゃねぇか、それ?」

五人目が言い放つ。「長門は文句一つ言わずに動き回って、それで狂ったんじゃないのか?なのにお前は長門の意思を踏みにじって、さらに長門に負担を押しつけるようなことをしてて、つまりお前は、ハルヒ以上に傲慢で身勝手な人間じゃねぇか?」

――くそっ。

会議を断ち切るように俺は席を立った。教室中の視線が集中する。
「…気分が良くないんで、保健室行ってきます」
教師の許可も待たず、俺はフラフラと教室を出た。ハルヒが爆睡中で助かった。起きてたら何言われるか分かったもんじゃない。


保健室で事情を説明し、ベッドに横たわる。断罪するような言葉が頭の中で反響する。
人間はみなエゴイストだと開き直ればそれまでだ。だが、それで何か解決するか?いいや、そんなのただの逃げだ。
長門は足掻いた。なのに俺は――。
……駄目だ。
俺は目を閉じた。これじゃ堂々巡りだ。気分が更に悪化する。
考えることを放棄したかのように、俺はシーツを被り、ひたすら目を閉じていた。

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