The Second Day―PartT


その日は二人で簡単に明日以降のことを打ち合わせして解散、今日は二日目。
十二月十九日。
いつも通り登校して席に着くと、いつも通りハルヒが後ろに座っていて、
「…で、シャミセンの具合は?」
無愛想に聞いてきた。
「あぁ、まだ本調子じゃないけどな、たぶん明日にはよくなってるハズだ」
「ふぅん」
ずいぶん暗いな、クリスマスも近いのにどうした?
「別に?ただちょっと変な感じがするだけよ」
変な感じ、ね…。
ハルヒは恐らく昨日今日は長門と接触してないはずだが、まぁコイツは獣並のカンの持ち主だからな。何となくだが、違和感を感じてるのかもしれん。
「サンタの気配じゃないか?」
深く考えるのはよそう。特に今は。
ハルヒもハルヒで「かもね」と言ったきり押し黙った。やれやれ。


昼休み。急いで昼食をかっこんだあと、俺は足早に部室へと向かっていた。
いつも通りの窓際の席に座って、長門は本を読んでいた。俺に気づくと軽く会釈して、すぐ読書に戻る。

………………。
…………。
……。

…よくよく考えてみれば、俺は何故部室に足を運んだんだろうな。別に長門に用があったわけではないし、かといって特別な理由もない。
「………………」
おかしいな…部室って、こんなに息苦しい場所だったか?
俺が何のアクションも起こさないのを気にしてか、長門は窺うような、また気遣うような目でチラチラ俺を見ていたが、俺が視線に気づくと、慌てて読書に戻った。
……何だ、この変な感じ。
「……スマン、すぐ戻る」
限界が来て、俺は逃げるように部室を飛び出した。扉が閉まる直前、驚きと寂しさが入り混じったような長門の顔が一瞬見えた。

部室から離れ、自販機前まで走ったところで俺は立ち止まり、息を切らしながら舌打ちした。
「……どうしちまったんだよ、俺は」
頭が真っ白だ。何だってんだ、全く。
「普通にしてりゃいいだろーが……」
そう、普通にだ。いつも通りに接すりゃいいだろ。何天パってる。
よし、と俺は深呼吸をする。冷たい冷気が肺を満たした。

「…よっ、さっきは悪かった」
詫びを入れつつ、俺は部室に戻る。
「……別にいい」
声には明らかに安堵が籠ってるが。
「ほら」
両手に持った紙コップの片方を差し出す。戸惑うような上目に、俺が思わず目を背けちまった。
「あー、いや、いらないならいいんだ。俺が勝手に買っただけだしさ…」
「…いい」
スッと両手が差し出される。しばらく呆けたあとハッとして、俺は紙コップを手渡す。気をつけろよ、熱いぞ?
「いただきます」
長門がコップを口に運ぶのを見て、俺もコーヒーを軽く飲んだ。うん、普通に苦い。それから、急におかしくなった。
「ハハ……」
いかんな、少し気を揉みすぎなのかもしれない。もっと楽にしないと身が持たないよな。
だいたい、さっきから普通普通と、何か意識し過ぎている。宇宙人、未来人、超能力者と、普通じゃない連中が周囲に集まってる現状で、今更何を求めてるんだ俺は。
コーヒーを飲んだせいか、ようやく落ち着いた判断ができるようになった。全く、カフェインの力は偉大だね。
たぶん俺が急に笑いだしたんで不審に思ったんだろうな、長門が探るような視線を俺に向けていた。そんな長門に軽く詫びを入れ、再びコーヒーに口をつける。今度はそれほど苦くは感じなかった。

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