校外実習・恋愛編(後)(涼・キョン長)


その後しばらく公園をぶらぶら歩き、池の野鳥を眺めたりいい年こいてアスレチックではしゃいだりした後、昼食を経て再び市内探索である。
ご承知の通り、穏やかなる陽気と昼食後というコラボは嫌でも眠気を誘うものであり、今回もその例外ではなく、俺としてはこの眠気を何とかして吹き飛ばしたいというのが正直な心境だ。そりゃ貴重なデート時間を睡眠に使うわけにはいかんからな。
どうしたものかと思案してたせいで、長門が立ち止まったことに全く気づかず、繋いだ手を引かれる感覚でようやく気づくという失態を犯した。
「………………」
長門の視線の先、
「ゲーセンか」
いつぞやのコンピ研との頂上決戦を思い出す。そういやコイツはオセロやチェスにも興味を示してたな。
…なんだかんだで、長門はゲームが好きなのかもしれない。
「入ってみるか?」
頷くことなく、長門はふらふらとゲーセンへ向かう。行きたかったんだな、やっぱ。
格ゲーやら音ゲーやらガンシューティングやら、主要なゲームは一通り揃っている。やっぱ休日だからか、中はけっこう混んでいた。それなりに常連もいるんだろう。
俺が何からやろうかと考えている間に、長門はクレーンゲームの前にいた。中身は例の通り、銀色宇宙人シリーズのぬいぐるみ。
「やっぱそういうのが欲しいのか」
そう言いつつ、俺はコインを入れる。三回チャレンジで銀色宇宙人に狙いを定める。
一回目、失敗。
二回目、掴んだと思ったが、やっぱり駄目だった。
まぁ、取らせない置き方してるわけだしな。
半ば諦めて三回目。狙いを定め、クレーンを下ろす。と、
「うおっ?」
上げられたクレーンは、しっかりと銀色宇宙人を掴んでいた。そのまま穴へポトリ。
かくして無事入手となったわけだが…、今一瞬だが、クレーンが曲がったよな?
チラリと長門を見る。既にコイツはぬいぐるみを両手で大事そうに抱えていた。
まぁ、そんなに欲しかったのなら…仕方ないか。
…ついでに言うと、この時の長門はもの凄くかわいかった。


ゲーセンから出る頃には、既に夕日が眩しい時間帯となり、同時に俺の財布もすっかり軽くなっていた。
この午後、ゲームの鬼と化した長門は、この店の各種ゲームの最高記録をあらかた塗り変えただけに飽きたらず、対戦ゲーではこの店の常連陣をチートレベルの強さで完膚無きまで叩きのめしてしまった(一応言っとくが、長門は情報操作を全く行なっていない)。
店内の半数近くの客が涙目という(俺的に)気まずい空気の中、俺達二人は最後にプリクラを撮って店を後にしたのであった。…当分この店には来れないな。後ろめたいことは何もないが。
「これ」
長門に手渡されたのはプリクラ写真。いろいろ落書きされた写真の中心には、俺と長門が写っていた。
最近のは写りがいい上にいろいろと機能がついてるってんだから凄いな。それにしても長門よ、せめてこういうときは笑顔で写ろうぜ。無理にとは言わないけどさ。
「…次は善処する」
どうやら次があるのは確定らしい。
「期待してるよ」
思えば、お互い恋愛に関しててんで素人のくせによく実践しようとしたもんだ。
…まぁでも、何となくだが、恋愛がどんなものかは分かった気がする。今後もデートを積み重ねれば、本当の恋愛の姿が分かるのだろう。
まぁ俺はいい。ではコイツはどうだろうか。
「なぁ、長門」
未だにぬいぐるみを大事に抱えている長門に、俺は聞いてみる。
「今日はどうだった?」
しばらく互いの足音が響き、
「楽しかった」
そう言って長門は片手を伸ばす。
「…そりゃよかった」
迷うことなく、俺はその手を握った。どうやら杞憂だったらしい。
「あのさ、…次のデート、俺に企画させてくれないか?」
遠出はごめんと言ったが、前言撤回。
コイツといられるなら、どこに行ってもいい。ふとそう思った。
「……そう」
長門は呟くような返事をして、

「楽しみにしてる」

夕日が長門を照らす。その横顔は紅く染まっていた。
次回のプランを考えるのは帰ってからにして、今は長門と一緒にいられるこの時間を、少しでも長く過ごすことにした。



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後書きに変えて

無駄に長くなりましたぁ実に申し訳ありませんっ!!
一応書きたいことは全部書けた気がするんですけどどうなんでしょうねアハハ←←
バレンタインでキョン長話は……流石に無理ですごめんなさい(爆)

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