舞い降りる(涼・キョン長)
風に煽られて冷たい水滴が顔に当たる。冬の雨など、一体誰が望んでいるんだろうな。ただ単に寒くて敵わん。
ちなみにこの雨は朝からずっと降ってるのだが、放課後になっても一向に止む気配はない。むしろ勢いを増してる気がする。迷惑この上ない。いい加減止めっつーの。
忌々しげに空を睨んでやったら、屋上に人影を見つけた。この雨の中、傘もささずに屋上に立ったそいつは、縁ギリギリの位置に立つと両手を広げ――って?!
「馬鹿野郎っ!早まるなっ!」
間に合うはずもないのに校舎に戻った俺は全力を上げて階段を駆け上がり、自分でも信じられんくらいの速さで屋上に到着し、蹴破る勢いで扉を開けた。
「おいっ――?!」
今まで降り続けてた雨は、いつの間にか白い結晶に変わっていた。さっきまでずぶ濡れだった周囲が、みるみるうちに白に染められていく。
そして俺が見た人影、カーディガンを羽織った小柄な女子は、屋上の縁から微動だにせずに空を見上げている。いつぞやの病院の屋上の再現か。
「よぉ」
声をかけると、長門はこっちを振り向いた。
「危ないぞ、降りてきなさい」
長門はコクンと頷くと、降りるためにこちらへぴょんと跳んだ。
ふわりと着地。瞬間、全世界から音が消えた、ように思われた。
舞い降りたユキ、いや雪、じゃなくて長門は何事もなかったかのようにこちらへ歩み寄る。足音すら聞こえない。完全に音が消えた。
「風邪を引く」
沈黙を破る微かな声、と同時に冷えた手に感じる温もり。俺は、引こうとする手を引き止めた。
「ユキ、もうちょっと、眺めないか?」
間を置いて頷く長門の頬が微かな朱を帯びる。寒さのせいか。それとも…いや、まさかな。
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音もない世界に
舞い降りたShe was snow.
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後書きに変えて
昨夜の降雪ホントやばかったです!一瞬で銀世界ですもん!電車遅れて深夜帰宅でしたが、終始ルンルン気分でした(笑)ユキー!!←
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