日向ぼっこ(涼・キョン長)


昼飯でも食おうかと思うのはいいが何故か屋上に上がった俺であるが、空を見上げて体育座りをする小さな背中を見つけてあながち正解だったとか考えなおしてみた。
「よう?」
呼びかけると小さな肩がビクッと一瞬上がって、長門有希の驚いた表情を浮かべた顔がこちらを向いた。弾みで眼鏡が少しずれる
「わ、悪ぃ…」
顔を真っ赤にしながらおぼつかない手つきで眼鏡を直す長門を見ると、何だか少し罪悪感を感じる。そのうち長門の心臓を止めちまうんじゃなかろうか。そうなったらこっちの朝倉に刺されて俺も終わりかな。
「な、んで…?」
ようやく口を開いた長門に、俺は購買のパンをかざした。
「何となくここで食いたくなってな、邪魔だったか?」
フルフルと、やや早めに首を振った長門は、「そんなことない」と言いつつ顔を背けた。
高く澄んだ秋空だ。今日はいつもより暖かいし、日向ぼっこには丁度いいな。サンドイッチを口に運びつつそう考えていると、
「……ふぅ…」
長門が僅かながら溜め息をついた。
「どうした?」
「うん…原稿が捗らなくて」
予想よりは深刻でなさそうでホッとしたが、長門にしちゃ重大なことなんだろう。文化祭も近いし、適当な文章を2、3枚書いて終わらせた俺と違って長門の作品は長編のようだし。心なしか表情にも疲労の色が見える。
「なぁ長門」
「……?」
「午後の授業サボって、二人で日向ぼっこするか?」
たぶん長門なら「だめ」の二言で断るだろう。
「…うん」
しかし長門の回答は離陸直後の零戦よろしく、俺の予想ななめ45゜を通過していった。
「…ほ、ホントに大丈夫か?」
「うん」
長門の返答は変わらない。
「…よし、じゃあのんびりしてるか」
ゴミをまとめると俺はゴロンと横になる。長門は遠慮がちに横に移動してきて、やはり横になった。
「気持良いな」
暖かな日光と、微かな風を感じながら呟く。こんな穏やかな日常は久しぶりだ。
すぅ、と微かな呼吸に横を向くと、既に長門は舟を漕いでいた。よほど疲れてたのか、それとも気持良かったのか。それにしても安心しきっていて、かなり無防備な寝顔だ。何かされても知らんぞ?いや、しないけどさ。
「おやすみ、長門」
柔らかな髪を軽く撫でて、俺も目を閉じることにした。
俺達の意識が戻ったのは、終業の鐘が鳴ってからのことである。



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後書きに変えて

嗚呼、穏やかなる日常のなんと素晴らしきことか(笑)
それにしても、日向ぼっこなんて久しくしてないです。


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