君を感じる(涼・キョン長)


足から、手から、長門が光の結晶になって消えていく。
見覚えのある光景だった。かつて長門に敗れた朝倉がそうやって消えていった。つまり今目の前で起こっているのは――。
「長門っ!!」
何もできない。止めることすらできない。思考は完全に停止していた。
長門は静かに首を振った。
「最終決定事項。誰にも止められない。わたしにも、あなたにも、涼宮ハルヒにも」
最後の一言が、死刑宣告だった。
「嘘だろ…なぁ長――」
「来ないで」
鋭い言葉で制され、情けないことに一歩踏み出しただけで歩みが止まる。
「わたしに接触したものは、強制的に情報連結が解除される。あなたを巻き込みたくない」
長門の首から下は、もう消えていた。俺はただ、見てることしかできない。
「自分を責めないで」
刹那、長門は確かに笑っていた。
「ありがとう」
次の瞬間全てが光に呑まれ、長門有希は完全に消滅した。
「………………」
取り残された俺は、今の今まで長門がいた場所を探る。長門がいた痕跡を、せめて髪の毛一つだけでも――。
ハラリと、目の前に何かが落ちてきた。反射的に手を伸ばしてそれを掴む。
奇妙キテレツな記号の書かれた栞だった。4年前の七夕。ハルヒのメッセージ。
『わたしはここにいる』

………………くそったれ、消えちまったら意味ねぇじゃねぇかっ!!
情けなくて、悔しくて、そして悲しくて、それでも何もできない俺は、ただ叫ぶことしかできなかった。
「長門ぉぉおっ!!!!!」


覚醒して顔を上げたとき、そこはいつもの文芸部室だった。
「ぉ…あ……?」
夢…?
…そうだ、確かいっと最初に来たはいいが、待ってる間に寝ちまったんだっけか――。
パラリ。
紙を捲る音が聞こえて、そして俺は、即座にそっちを見ていた。

いた。

長門有希は、いつものように窓際に座り、無表情に本を読んでいた。
「………………!!」
何とも表現できない気持ちに襲われ、不意に目頭が熱くなった。慌てて拭うが、困ったことに止まらない。
「………………」
不意に影が差した。見上げると、長門が側に立っている。
「大丈夫?」
長門の指が、涙に触れた。
そして俺は、
長門を抱きしめていた。


「長門………………!!」
感じる。長門の温もりを、確かに。
触れる。華奢で小柄な身体を、確かに。
聞こえる。長門の呼吸が、確かに。
間違いなく、長門有希はここにいる。
安心して、そしてそれがとてつもなく嬉しくて。それでも涙は流れている。
拒まれるかなと思ったが、長門は抵抗一つせず、逆に俺を抱きしめた。
「………………」
言葉はない。だが、十分だった。十分過ぎた。
小さな手の温もりを背中に感じながら、俺は落ち着くまで長門に身を委ねていた。



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後書きに変えて

久々の衝動書きが来ましたがどうにもオチが弱い気がします…うーむ、大丈夫かこんなんで?←

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