第四章 下


…これでいい、……よな?
教室への道のりを、俺は何度もそう呟きながら歩いた。
どうしたらいいのか分からない。アイツはそう言った。
俺はちゃんと、アイツに正しい道を示してやれただろうか。
…そもそも、正しい道って何だ?
ハルヒが自分の意思で俺たちを元に戻すことが正しい道だろう。ハルヒが現状に違和感を覚えているのならチャンスかもしれない。“俺”の様子がおかしい、早く今まで通りに戻ってほしい。そう思ってくれたならしめたもんだ。勝手に俺と長門は元に戻ってるだろう。
だが、俺はひょっとしたら、誤った道を示しちまったのかもしれない。
自分の思う通りに行動しろとは言ったが、もしそれでハルヒが直接長門に詰め寄ったりしたらどうなる?もしそれで最悪の事態、つまり事が露呈したら。…間違いなく、ゲームオーバーだ。
いったい、俺はアイツにどっちの道を示したんだ?
もはや発言を撤回することも、確認することもできない。
なんてこった。
やっちまった、やっちまったのか俺。
ちくしょう、どうすりゃ――。
「……長門さん?」
気づけば教室の前だった。俺に声をかけたのは、さっき俺が道を譲ったクラスメートだった。
「あの、大丈夫?顔色悪そうだけど…」
恐る恐るだが、気遣うような声。
「…大丈夫」
教室に入ろうとする。が、
「何言ってんの、おまけに凄い汗じゃない!」
他の女子にもそう言われた。確かに、今さっき心臓に悪い経験してきたしな。
「無理しないで、保健室で休んで来たら?」
「先生にはアタシらが言っとくからさ」
勘違いでも思い上がりでもなさそうだった。
「…そうする」
それから、
「ありがとう」
心なしか、二人とも嬉しそうだった。


保健室へと向かう最中にチャイムが鳴った。
これであと一時間弱は、あの後どうなったかの確認が出来なくなったわけだ。
今頃ハルヒはどうしてるだろう。シャーペンで長門を突き回してるのか、それとも授業止めてでも、長門を追及しているのか。いや、それなら今頃五組で騒ぎが起こってるか。
考えててもしょうがない。やっちまったもんは仕方ない。分かっちゃいるが、やっぱり気になってしまう。
…とりあえず、あと一時間弱待とう。話はそれからだ。
「よかった、こちらでしたかっ!!」
叫ぶような声に振り向くと、古泉と長門だった。
「お前ら、何で――」
「説明は後で。いいですか、落ち着いて聞いてください!!」
古泉はいつになく深刻な顔をしていた。やっぱりやっちまったのか、俺。
「…緊急事態」
淡々とした長門の言葉は、まさに最後通牒だった。
終わった。今から足掻いてもどうしようもない。なるようになるしか、な。
「…何があった?」
俺は覚悟を決めて、古泉の言葉を待った。

「……涼宮さんが倒れました」

それは、予期した答えと全くベクトルが違っていた。


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