第四章 上


目覚めたのは朝六時。こんなに早起きしたのは何時以来だろうな。
ところで早めに就寝すると、翌日の目覚めは大抵良いものであるというのは大変喜ばしいことであるが、その代償として、寝癖がひどくなってしまうのが玉に瑕である。果たして、寝癖ゼロの長門とは対照的に、俺の髪型は予想以上に荒ぶっていた。
結局、長門の情報操作でなんとかしてもらったが、傍から見たら長門のありえない姿を拝んでいたことになる。写真にでも残しておきたかったが、状況が状況だけにそれは断念した。
朝食を適当に済ませ、身支度や着替えに四苦八苦しながらも、七時半には長門宅を出ていた。本来なら朝食を食い終わってる時間だ。環境が変われば生活も変わるとか誰かが言っていた気がするが、あながち間違いではないらしい。
学校麓の坂まで来たところで、頼んでもないのに律儀にも俺たちの到着を待ってたらしい古泉と合流した。朝からまた辻説法のつもりか?
「まぁ、そう警戒なさらずに」
これまた頼みもしないのに苦笑さえ爽やかに決めやがる。
「昨日はどうでしたか、何か変わったことなどは?」
フツーに飯作ってフツーに寛いでフツーに睡眠取ったな。長門に聞いても同じこと言うだろうよ。
「そうですか…フム。やはり、涼宮さんが自発的に事態を解決させるのを待つのは得策ではないみたいですね」
「そもそも、アイツは何が起こってんのかすら知ったこっちゃねぇだろ?」
「おっしゃる通りです。そうなっては困りますからね、あなたも我々も」
聞くまでもないが、その我々ってカテゴリの中にはちゃんと長門と朝比奈さんは入ってるんだろうな?
「しかし僕個人としましては、この状態が長期間続くのも、決して悪いこととは言えないと思うのですけどね」
俺としてはできるだけすぐに終わってほしいね。長門はともかく、俺の身がもたないし。
「はて、聞き違いでしょうか。 “今すぐにでも”、とおっしゃるかと思いましたが?」
古泉が何を言わんとしてるか、今の俺には何となくだが分かる。
「…ま、俺にもいろいろ事情ってのがあってな」
「…なるほど」
とまぁ俺たちがこんな感じで坂を登りながら話をしている間、
「………………」
長門は相変わらず本を読んでいた。まぁいいか。
都合上、コイツは学校に来てから帰るまでずっと読書もできないし。今のうちに読み進めとけ。


長門と別れて教室に入ろうとしたとき、ちょうど教室を出ようとしてた(長門の)クラスの女子と鉢合わせになった。
「あっ…」
彼女は俺を少し避けるように道を譲ろうとしたが、
「どうぞ」
長門の淡々とした声で、俺は先手を取る。ついでに見事に道も開けてやる。
「えっ…?」
明らかに向こうは戸惑ってるが、譲るつもりはないぞ。長門はああ見えて相当頑固だからな。待つこと数刻、
「…ありがとう」
小声でそう言って、その女子は教室を出た。多少警戒されてる感が否めないのは、まぁ仕方ないか。
今の光景を目の当たりにしてか、かなりの数の視線が俺に集まっているが、構わず着席。そのまま読書。
…今のところはな。


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