「太陽(たいよう)が死んだ…?」

唐突に告げられた言葉は、一瞬では理解なんて出来なくて。

死んだ?  ────… 誰が?
太陽が ────… 死んだ、の?

右から左へと、ただ流れていきそうになったそれが、頭の中で整理されたと共に、私は目の前の人物に掴み掛かっていた。

「っ、 嘘ですよね? 太陽が死ぬなんて…」
「……嘘じゃない」

「そんな…、何かの悪い冗談でしょう? そうだ、結城(ゆいじょう)さんも人が悪いから…」
「…千星(ちせ)」
「やだなあ、私をびっくりさせようとしても、」
「千星っ!」

滅多な事では声を荒げることのない結城さんの怒鳴り声に、ビクリ、と肩が震えた。
太陽と同じ、紅(あか)い目が私を射抜く。

耐えられなくなって、俯いた。

「────…もう一度言う。 太陽は死んだんだ。任務の途中、襲われた隊員を庇って、太陽は死んだ」

じっ、と床を見つめていた私の前に、結城さんが右手を差し出した。
握られていたのは、あちこちに血泥がついて擦り切れ、ぼろぼろになってしまっている隊服。
しかも、それには結城さんや彼等…隊長と肩を並べることのできる者しか着ることを許されない、彼らひとりひとりに与えられた紋章(エンブレム)が付いていて。
空に浮かぶ太陽をイメージした模様に、銀の十字架(クロス)の突き立てられた特殊なそれは、彼以外、着ることは許されない。

「、っ…!」

全てを理解した途端、私は結城さんの手からそれをひったくるようにして奪うと、彼の止める声も聞かずに、走り出していた。

「雪都(ゆきと)…」

考えるのは、いつも太陽と一緒にいた、彼の事。

活発で、思いついたらすぐに行動に移す太陽とは違い、冷静で物事をじっくり判断してから動く雪都とは、任務についてだったり、私生活の細かなことを巡っては、よく喧嘩をしていた。
それでも、彼等が本当に仲が悪いわけではないと知っていたから、結城さんも私も、そんな彼らを、いつも呆れて笑いながら見ていたっけ。

「雪都!」

飛び込むような形で彼の部屋に押し入ると、窓の淵に腰掛け、外を眺めていた彼がゆっくりと私を見る。

「太陽が…、太陽がっ、────死んだって…!」

搾り出すようにして告げた言葉は、最後には震えて引き攣った。
結城さんから聞かされたときは、驚いて涙なんて出てこなかったけれど、目の前にいる雪都を見ていたら視界がぼんやりと滲んできたことに気づいて、唇をぎゅっと噛み締めた。

「────…隊内の奴らが騒がしいと思っていたが。そうか、太陽が…」

彼は、私が持っていた太陽の隊服をちらりと見て、また視線を外に戻しただけだった。

「死に急ぐだろうとは思っていたが、まさかここまでとは、な」
「雪都…」

彼は今、なにを思っているのだろうか。
ただ、じっと窓の外を見つめる雪都に、私はなんて声をかければいいか、わからなかった。



もし、もう一度時間が戻せるなら

あの頃に戻りたい。
4人で笑いあっていた、あの頃に────…。

(太陽…)



‐‐‐‐‐‐
2010/9/20

太陽→千星→雪都で、 雪都は 太陽→←千星って思い込んでいたら、いいな。っていうのと、はくおーきのアニメ見て思いついたってことだけメモしとく。なんも似つかないど。

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