「私は神になりたい」

「そうか、一度死んでくればいい」

「ひっど!そこは理由を聞くところだよ!」

「…お前って面倒くさいやつだよな」



呆れたように、馬鹿にするようにこちらを見るハセヲ。くそーちょっとばかし装備がかっこよくなったからって調子に乗ったな。下から睨みあげれば、あの嫌味ったらしい顔で今度は吐くように笑われた。…私の話を聞く気があるのかな。


「しょうがねぇなー。このハセヲ様が相談に乗ってやんよw」

「むかー。なんかその言い方気に食わない」

「あっそ、じゃあ俺はダンジョンにでも行ってくるかな」

「あーあーあーごめんなさいすいません、相談に乗ってください!」



私相談する相手間違えた?クーンさんのほうがよかったのかな。いやでも彼のことはハセヲのほうが詳しいし…。しょうがない。まぁハセヲだって仮にも恋する男子だ。私の気持ちも分かるはず!そうだハセヲだって根はいい奴!…のはず。大丈夫だ。意を決して話を切り出す。



「カイトのことなんだけど」



瞬間ハセヲの顔がいかにも嫌なものを見たように歪んだ。



「俺あいつ苦手」

「えー!でもこのまえパーティー組んでたでしょ?」

「まぁ…」

「ね?相談だけでも」



しょうがないと相談に乗ることを承諾してくれたハセヲに早速悩みを相談する。「ちなみにあいつに勝とうなんて無理だからな」「そんな無謀なこと考えてないですー」そういうのじゃなくて、れっきとした恋の相談なんですけど。呟いた直後「はぁ!?」とハセヲが叫んだ。え?なに?そんなに驚かなくても。



「お前…あいつが好きなのか」

「好きだけど」

「まじかよ…」



そわそわと目線を彷徨わせ始めたハセヲ。なんだなんだ。問題でもあるのかな?まぁさっさと用件を言わなきゃ。


「あのね、私この前カイトにメール送ったんだ」

「へ、へぇ…なんて?」

「好きな人のタイプ」

「そりゃ大胆だな」

「うん。頑張ったもん。でね、その返信がね」


思い出して悲しくなる。なんだよと催促してくるハセヲに向き直って口を開く。



「文字化けしてたけど、多分アウラって書いてあった」



沈黙。口を開いては閉じてを繰り返すハセヲ。そりゃなんて返せばいいのか分からないよね。ちょっと悪い気がしてきた。「今の話忘れて」と言おうとしたら、いきなりハセヲが立ち上がってソファの後ろから何かを引っ張りだしてきた。



「いや、悪いと思ったんだけど、切り出すタイミングがつかめなかった…というか恋の話だとは思わなくて……とりあえず、すまん」



開いた口が塞がらないとはこのことか。ハセヲが引っ張りだしてきたもの…というか人を見て一気に心臓から血の気が引いていく。


「カイト…」

なんでカイトをパーティー組んでるの!!ハセヲをみれば苦笑いで頭をかいている。なんとかしてよこの状況。
なにか喋ろうと唸っているカイトがハセヲに引きずられながら私の前に突き出される。
ああああぁ、だとか語りかけてくれるのは嬉しいけど私カイトの言っていること分からない。


「ハセヲ、カイトなんていってるの?」

「んなの俺にも分かんねぇよ」


困惑するハセヲと私をみて、なにか悟ったのか、ゆらりゆらりと私のほうへ近づいてくるカイト。ちょっと不気味だけどそこが可愛い…とか思っている間にいつのまにか距離が縮まっていた。


「カ、カイト。さっきの話…聞いていたよね?」

「………」

「えーと、その…あの、」



口ごもる。なんて言えばいいのやら。頭のなかのボキャブラリーが死滅していく。



「私、はそのーカイトのことが…えっと……ってきゃぁ!」


いきなり肩を鷲掴みにされてぐい、と前にひっぱられる。
…うわぁマジでキスする2秒前くらいの近さだよこれ。動いたら当たるな。うん。
至近距離で、短くなにか唸ったカイトは拍子抜けするほどするり、と私から離れてしまった。そのまま蒼い浮遊物に変化してどこかへ行ってしまったカイトに私もハセヲも唖然とするばかり。いや、だってあのながれなら誰だってキスを期待するでしょ。


「…」

「あのさ、」

「なに?」

「あいつ、お前のこと嫌いじゃないと思うぞ」

「そうかな」



今度カイトの言葉について研究してみようかな。そんなことを考えたとある午後。






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