星を見に行こうと言い出したのは風也のほうだった。
暖かそうなマフラーを首に巻き、私の家の玄関に立っていた風也は寒さのせいか若干震える声で「今夜流星群が見れるんだって」と言った。
それが本当か否か分からなかったが、確認するより前に私の体はマフラーとコートを手にしていたあたり、理由なんてなく本能的に風也と一緒に居たかったんだろう。


「どこで見るの?」

「どこにしようね、僕はどこでもいいよ」

「自分から誘ってきたくせに」


白い息を出しながら二人してあてもなく歩く。
もうすぐ始まっちゃうかな、なんて言うくせに歩くスピードは一向に速くならなかった。


「海行こうか」

「寒くない?」

「どこだって同じだよ」


緩やかな歩調に合わせるようにゆっくりと指が絡め取られる。
風也の手、乾燥してる。
確かめるように指を動かしていたら、ぎゅっと力を込められた。
「恥ずかしがらなくてもいいのに」 違うわ恥ずかしいわけじゃない。
抗議のつもりで思い切り手に力を込めれば、小さく笑われた。その目、子供っぽいとか思っている目だ。


「あ、始まった」

「ほんとだ。海、間に合わなかったね」


静かに音を立てず流れる星をみて柄にもなくロマンティックだと思った。
しばらくその光景を眺めてから視線を風也のほうへ滑らせれば、どういうことだかばっちりと視線がかち合う。



「風也、見なくていいの?」

「見えてるよ」

「私を見てたら空見えないでしょ」

「君の目、すごくキラキラしてる」


にっこりと笑った風也の瞳に流れ星が映った。
あ、そういうことね。私の目にもたくさんの流れ星が映っていたんだ。


「直接見たほうが綺麗なのに」

「そうかな」


互いに相手の目を覗きこむ。
風也の目に映る光の線が忙しなく消えたり生まれたりする。


「やっぱり直接見たほうが綺麗だよ」


さすがに恥ずかしくなってきたので、視線を空へ戻した。
忙しなく流れる星の光が目に沁みた。









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