「疲れた」


「ご苦労様です」


「それだけ?ここまで食料を運んであげた私にたいしてそれだけ?」


「いえいえとても感謝していますよ」


笑みを湛えるデュナミスの顔を見ると、感謝されてるはずなのになんとなく馬鹿にされているように思える。



「デュナミスもさ、男なら途中で待っていてくれるとかないわけ?なんでわざわざ私がこんなところまで来なくちゃいけないのよ」


にこにこと笑みを絶やさないデュナミスを睨む。少しだけ肩をすくめたデュナミスだけどたいして悪びれるようすはなかった。本当に癇に障るやつだ。


「霧の中で逢い引きというのはあまり好きじゃないので」


「あ、あい、逢い引き?」


「だって顔、見れないじゃないですか」


デュナミスはさらっと言ったけど、とんだ爆弾発言だ。
逢い引きって言ったらあれだ…男女が人目を忍んでデートする…。
人目を忍んではある意味間違っていないけどデートってなんだデートって。



「二人きりなんですからあながち間違ってないでしょう?」



「違う!だ、だって私とデュナミスは一切そういう関係じゃないでしょ、なんていうか…配達人と届け先の人みたいな」


「そうですか…残念です。私は貴女のこと結構好きなのですが」


「あーあーあー聞こえないーデュナミスの言ってることなんて聞こえないー」


「……初心なんですね、顔真っ赤ですよ」


断じて真っ赤なんかじゃない。吃驚してちょっと血行がよくなってしまっただけだ、そうにちがいない。だからデュナミスの言ったことが嬉しかったとか、ちょっとときめいたとか、そんなこと思ってないからな。ああもうなんでデュナミスはそんな嬉しそうな顔してるんだ。私の顔がそんなに変か!



「じゃあ今度からは私も途中まで降りていきますね」


「いい!結構です!!デュナミスはここに引きこもってればいいわ」


「さっきまでと言ってることが違いますよ」


「うるさい!デュナミスのばーか」



子供っぽい私の態度にデュナミスが口に手をあてクスクスと笑った。
そういうところまで気障なんだから嫌になっちゃうわ。
今度くるときは絶対にその余裕ぶった態度をはがしてやるんだから。





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