こんなもの初めて見た。屍人でもないこれは一体なんなのだろうか。鉄パイプをもう一度しっかり握りなおし距離を縮める。近づけば次第にぐちゃぐちゃという粘着質な音がしてきた。自分の呼吸とその粘着質な音だけが空気を揺らす。


「なに、これ」


懐中電灯によって照らし出されたそれは肉塊だった。髪も肌もなにもなく、黒ずんだピンク色がてらてらと光るそれは時折小刻みに震えている。生きて、いるのだろうか。ためしに鉄パイプで触れてみたらびくり、と震えた。生きてはいるのだろうが襲ってはこないように見える。私が近づいた途端忙しなく震えだしたそれは、自身のだす音と相まってとても奇怪で気持ちが悪い。私を威嚇でもしているつもりだろうか。


「やっぱり殺したほうがいいよね…」


ゆっくりと鉄パイプを構える。早く牧野さんを探さなければいけないけど不安要素は一つでも減らしておかなきゃ。待っててね牧野さん。ここまで屍人をいっぱい倒してきたんだからいまさら躊躇なんてない。牧野さんは優しい、きっと武器なんて使えないだろうから早く私が行ってあげないと。私が牧野さんを守ってあげるんだ。


振り下ろすたびにぐちゃり、と変形する肉塊。どこから出てくるのか液体の飛沫が顔にかかる。もういいかしら?いやまだ動いてる。もう手を煩わせないで欲しいわ。


「牧野さん、待っててね、牧野さん」


呟きながら渾身の力で殴り続ければ、やがて肉塊は動かなくなった。
肩で息をしながら汗で滑る鉄パイプを握り締め、最初のように肉塊に触れてみる。今度はもう動かない。ちょっと疲れちゃったな、でも休んでる暇なんてない。さぁ、早く牧野さんを探さなくては。









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