君は天使のようだと、僕らには触れられない絶対的な存在だと、彼は、天城ハルトは言った。
それは紛れもない私に向けられた言葉であった。
だがしかし生憎私は彼に賞賛されるほどの美貌など持ち合わせてはなかったので、彼の言葉はただの嫌味にしか聞こえない。
そしてハルトが言った僕ら、という複数を表す言葉が解せなかった。いや彼とかかわりの深い人物など一人しかいない、がしかしその彼は私のことなどこれっぽっちも関心がないとばかり思っていた。



「兄さんのこと考えてるの?いいなぁ君の頭のなかは今兄さんでいっぱいなんだね、兄さんが羨ましいよ」


恍惚とした表情はまっすぐに私を見つめていた。
ああなんだこれ気持ち悪い。
感じたことのない不快感が腹のそこから沸きあがってくる。



「君は綺麗だから、僕らも綺麗にしてくれる。ほらね天使みたいでしょ。でも手が届かないんだ、眩しすぎるんだよ君は。きらきらきらきら目が潰れちゃうくらい綺麗。」


嫌悪感を隠すことなんてもうできない。自分でも頬が引き攣り眉間に皺がよるのを感じた。私と一定の距離を保っていたハルトが一歩前に出る。


「ねぇ僕を綺麗にしてよ、」


真っ白い腕が伸ばされる。でも私に触れることなく、ただ私を迎え入れるみたいに精一杯伸ばされるだけ。虚ろな瞳に期待のようなものがちらちら見え隠れしていた。


「ハルト、」

「お願いだよ」


にっこりと愛らしい笑顔をしていたハルトが脳裏で蘇る。ねぇ、ハルト、あなたは覚えてないかもしれないけどね、ハルトのほうが何倍も綺麗だったんだよ。それこそ私にとって眩しい存在だったんだよ。ああ、もうそんなこと今のハルトはどうだっていいのでしょうね。



(もどりたくても、もどれない)





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