今日のルガインは妙に機嫌が良かった。
機嫌が悪い、ということが滅多になくおまけにいつもにこやかな好青年である彼だ。機嫌がいいといってもいつもよりテンションが高いだけなんだけれど。


「魔族と人間の関係改善はとても大切なことですよね?」


「うん、それはもちろんそうだけど…」


「これは早急に解決すべき問題だと思うんだ」


いつになく熱く語るルガイン。
国の政に関わっているからなのは分かるけど、それにしては熱が入りすぎのような…。
それからまた熱く語りだしたルガインは私そっちのけで一人会議状態になってしまった。主に魔族と人間の関係修復とかそんなこと。というかそれしか言ってない。


「ね、ねぇルガイン?私とあなたは人間と魔族だけれど、こういう仲なんだから…そんなに悩まなくてもきっと時間が解決してくれると私は思うわ」


「そうだけど、やっぱりなにかきっかけが必要だと思う!」


だんっ、と机を叩いたルガインは熱いまなざしで私を穴が開くんじゃないかっていうほど見つめた。そ、そんなこと言われても私、なにも思いつかないよ。
お祭り開催とか?なにか人間と魔族が一緒に参加するイベントでもやればいいのかな…。


「ごめん、私そういうの考えるの苦手…かも」


予算とかいろんな計画立てるの、私には無理だよ。
力になれず申し訳なくてうな垂れれば、「ち、違うんだ」と慌てたようにルガインが言い放った。


「君になにか意見を言えといってるわけじゃないんだ、ただ…その、提案というかお願いというか」


さきほどの熱気はどこへやら。急に覇気のなくなったルガインはもどかしそうにポケットに手を突っ込んだままもごもごとなにやら独り言を言っている。
ルガインが私にお願いなんて珍しい。なんだろう、遠征してくれとか?それも嫌だなぁ…。誰かお偉いさんのお出迎えとかならまだいいけど…。



「結婚、」


「…へ?」


「だ、だから私と結婚してくれませんか」


いきおいよく目の前に差し出された指輪に目を見開く。
あ、綺麗な指輪だきっと高いんだろうなぁ…、なんて考えていたら問答無用に左手を掴まれて手際よく薬指に指輪がはめられた。ぴったりと指に収まる指輪と真っ赤な顔をしたルガインを交互に見て、私もやっと顔が沸騰しそうになってきた。
これは、所謂プロポーズってやつで、私は今その返答を迫られてるわけだ。


「これも政の一環だったりする?」

「ま、まさか!さっきのは…そういう話にもっていくための前置きのようなもので、決して君を利用しようだとかそんな気持ちはこれっぽっちもないですよ」


ということは本気の本気、大真面目なんだなぁ。
考えたことがないわけじゃないけど、いざ言われるとなんて返していいのか分からない。ああもう目の前霞んできたし声でないし、どうしよう。
これじゃあルガインもあきれちゃうじゃないか。


「返事、もらえますか?」


そんな私を優しく見つめてくれるルガインにただただひたすら頷いた。
やっとでた言葉は「よろこんで」というなんともありきたりな言葉だった。



(幸せの第一歩)





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