私の膝の上に置かれたバオの頭を見て、小さくため息を吐いた。 くるくるとしたバオの髪が私の肌を刺激してこそばゆい。 バオだってこの暑いなか人の膝、もとい肌にべったりとくっついているなんて、不快であるはずだろうに。お世辞にも美しいとは言えない癖の強い髪に指を絡めながら、なにかあったのだろうか、と思考をめぐらせてみたが、やはり皆目見当もつかずただ私に弄ばれる髪の毛を見つめていた。 「なぁ」 「なぁに」 「俺さ、これから変なこと言うけど笑うなよ、自分でも変だと思ってるんだから、とにかく絶対笑うなよ」 唐突に言葉を発したバオは体を捩じらせてまっすぐ私を見据えた。 至って真剣な眼差しだったけれど、はらりとバオの顔にかかった髪を耳にかけてあげただけで彼の真面目な顔はあっけなく綻んだ。ちょっと気分がいい。 自然と笑顔になった私を見て今度はさきほどより膨れ面になるバオ。彼はどうも真面目な顔がへたくそだ。 「ちゃんと聞いてくれよ」 「ごめんね、ちゃんと聞くから」 不貞腐れて横を向いてしまったバオに謝ってなんとか機嫌を直してもらった。あぁでも膨れ面は直ってないみたい。 それを指摘したらまた機嫌を損ねちゃうんだろうなぁ。 「で、一体バオは何が言いたかったの?」 「…俺さ、お前のこと好きかもしれない」 「え?」 「だからさ、もし、俺がお前のこと好きって言ったらどうする?」 またしても横を向いてしまったバオの表情は見えなかった。 それでもどこかしょんぼりとしたオーラを漂わせるバオの頭をできるだけ優しく撫でてあげた。 「バオはどうしてほしいの?」 「知らない」 そう、と私が呟いてからぱったりと会話が止んだ。 そんなに後悔するのなら最初から言わなければいいのに、と思うほどバオの纏う空気は重かった。 ああ本当に不器用な人だ。そう思うとじっとりと汗に蒸れた自分の膝に頬を寄せるバオが可愛らしくてしょうがなくなる。口からクスクスと笑いが零れてしまったがこの際気にしない。 「笑うなって言ったのに」 「いえ、私もバオのこと好きだといったら貴方はどうするかな、と思って」 勢いよく私をみたバオの口をパクパクと開閉させるさまもまた可愛らしくてしょうがない。困惑気味に私を見つめる彼を上覗き込むように見つめ返す。さっきまでのどんよりとした空気はなくなっていて私たちの間をゆったりとした風が吹き抜けた。 「髪」 「ん?」 「撫でろ」 「はいはい分かりましたよ」 しばらくして恥ずかしそうに顔を背けたバオはぶっきらぼうにそういった。 そろそろ足が痺れてきたけどもう少しだけ我慢してあげよう。 |