レギュラスという人は劣等感の塊のような人だった。
いつも頭の中央にシリウスがいて、自分と比べているような人だった。
なんでそんな卑屈なのかと一度尋ねたことがあったけど、「君には関係ない」と一蹴されて結局答えは聞けなかった。
だからといって最低最悪なつまらない人間というわけでもない。彼は卑屈でぶっきらぼうで、不器用な人だったけど、間違いなく優しい人だと私は思う。



「馬鹿で不器用で意気地なしのくせに」


「そうだね」


「君が人を殺せるわけないじゃないか、そのくせ死喰い人になろうだなんて馬鹿げてる」


今までに見たこともないくらいの剣幕で怒るレギュラス。それでも、私を罵倒する言葉はすべて彼の優しさでしかなくてむしろ彼自身に向けられてるようにも思えた。
そうだよ、レギュラスの言うとおりだ、私は弱いやつ。でもそんなこと言ったらレギュラスだって同じよ?だってあなたはすごく優しい人だから。


「じゃあ、私死喰い人になるのやめるから、レギュラスもやめよう?」


こういえばレギュラスも考え直してくれる、なんて考えが甘いことくらい分かってた。覇気のない笑みは私の胸をじくじくと痛めつけて、無言で否定の意を表しているようだ。


「……君は優しいね」



彼は決して首を縦には振らなかった。ただ私を悲しそうに見つめていた。結局、彼を突き動かすのは兄への嫉妬と羨望と劣等感でしかなくて、私には彼を変えるほどの力も価値もありはしなかったんだ。







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