※女の子の日ネタ






「女の子の辛いところよね」とフローレンやムーミンママは口をそろえていった。
まったくそのとおり。血が出るし痛いしイライラするし。
今日は家でゆっくりしようとも考えたけど、それだと一層憂鬱になるので清清しい小川のほとりに行くことにした。




「今日はやけに機嫌が悪いね。フローレンと喧嘩でもしたのかい?」


「私とフローレンが喧嘩なんてするはずないよ」


「それもそうだね、じゃあ本当の理由は?」


釣竿を横においてスナフキンが私の隣に座った。
スナフキンの顔を見た。いつもどおりの爽やかな笑顔。
どこまでも好青年な彼に生々しい理由を述べるのはなんとなく気が引ける。
そもそも男性である彼に、女性特有の悩みを話すこと自体おかしいだろう。



「ちょっとね、お腹が痛いだけだよ」


「食べ過ぎて下したの?」


「ち、違う!食べ過ぎてなんかない!」


生理なんです!と口が滑りそうになって慌てて口を噤む。
危ない危ない……。
でも、女の子がお腹痛いって…少しくらい感づくものじゃあないのかな。
相変わらず微笑みを絶やさないスナフキンは多分、私が本当に食べ過ぎたものだと思ってるに違いない。それはそれで困る。女として。


「私だって、一応女の子なんです」


ぼそ、と呟いてスナフキンを見つめた。
お腹下したとかそういうこと言われたら傷つくんですからね。
そういう意を込めて見つめたつもりだった。


「え………あ、あぁそういうことか。ごめん気付かなくて…」


だから決して私が絶賛女の子の日であることを主張したかったわけじゃない。
いや気付いて欲しくなかったわけでもないんだけど、むしろ察して欲しかったんだけど、私の発言はそういう意味じゃあなくて…あぁもう上手くいかない。



「……お腹、痛くない?」


「う、うん大丈夫…です」



嘘です。痛いです。というかさっきもお腹痛いってあなたに伝えたはずなんですけど。
帽子を目深に被って「背中擦ろうか?」とか「なにか欲しいものあるかい?」とか、さながら病人のような扱いをするスナフキン。気まずそうに視線を逸らされながら気を使われるって変な感じだ。


「スナフキン、あなたちょっと変よ」


「そういう…女性の扱いには慣れてないんだ」


「ああ、そうなんだ大変だね。くらいでいいんじゃない?」


「いや、君の様子を見ていたらそんな軽いこと言えないさ」


女性の扱いに慣れてないとか嘘だ。絶対嘘だ。あ、ちょっと格好いいや、なんて思った私の心がそういっている。
「今日はゆっくりおしゃべりでもしようか」女性の扱い云々について考えていた私に、いつもより少しだけ優しい口調でスナフキンが言った。だからそんなに気を使わなくても…一応歩けるし、お腹痛い以外は元気なんだよ。


でもまぁスナフキンがこんなに優しいのだから今日はとことん甘えてやろう。





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