初対面の印象としては、弱そうな子。
私よりちょっぴり背が低くて、なにより細い。髪の色と同じく彼自身も淡い印象だった。
ここまで私を案内してくれた彼の兄だという人とは外見、雰囲気を見るかぎり正直あまり似つかない。本当に兄弟なのかな?と疑いもしたけど「兄さん」と呼ぶ声や、そんな彼をにこやかに見つめる表情をみたら、ああ、やっぱり兄弟なんだなと分かった。



「ハルト、お前に友達を連れてきたよ」



「友達?」



不思議そうな目が私を見る。とん、と背中を押されたので慌てて彼に近寄り「初めまして」と緊張した声で話しかければ、瞬く間に笑顔に切り替わった顔で「初めまして、僕はハルトって言うんだ」と返された。
ハルトと初めて交わした会話はどこにでもあるような平凡なものだった。


好きなもの、嫌いなもの。ハルトの兄であるカイトくんのことなんかも話した気がする。恥ずかしながらこの頃の私は友達と言えるひとがまったく、いや0に等しい、もっと言うと一人もいなかったので、ハルトと話すことすべてが私にとっては記念すべきものだった。



「僕ね、友達いなかったんだ」



「私も。ハルトが初めての友達だよ」




吃驚したように私を見るハルト。そんなに意外だったのかな。
てっきり友達がたくさん居るのかと思ってたよ、と零すハルトに首を全力で横に振って否定の意を伝える。私に友達がたくさん?ありえないありえない。だれが好き好んでこんなやつと友達になりたいなんて思うんだ。あまりに必死に否定するのがおかしかったのか、ハルトが笑いだして、笑われた本人である私はただただ頬が熱くしていた。




「君みたいな友達ができて僕嬉しいな、兄さんもこんな素敵な友達を連れてきてくれてありがとう」



少し離れたところから私たちを見ていたカイトくんが照れくさそうに頬を掻いて「公園で見つけただけだ」とぶっきらぼうに言った。
そういえば、公園で一人ぼーっとしていたところを連れてこられたんだったな。
なんで私だったんだろう?友達が居なさそうだったからか?
カイトくんが何を思って私を連れてきたか分からないけど、私は、初めて友達というのができた。これはものすごいことで、私の中では世界がひっくりかえるくらいの珍事であった。




「これからもよろしくね」



「うん、ハルトと友達になれて嬉しい」



笑顔が、いっぱいあった。
その日から私とハルトは唯一無二の友達、で。ずっと一緒にいようねって約束して。
ハルトのおかげで明るくなれた私は他にも友達ができたりもしたけど、そのことを嬉嬉としてハルトに報告したとき、すごく寂しそうな顔で「よかったね」と言うハルトをみたら、やっぱりハルトが一番の友達なんだなと思った。
ハルトに私以外の友達がいないということがすごく嬉しい。
私だけがハルトの友達でいれる。
きっとハルトも同じ気持ちだったから、私が他の友達を作ったのが嫌だったんだね。
そう分かったらとても気持ちがふわふわとして、気分がよかった。




(友達なんかじゃ足りないくらい。大好き)



でもね、今のハルトが分からないんだよ。
今のハルトを受け入れていいのかも、分からない。


でもきっと、私と初めて友達になってくれた、ハルトのこと、友達じゃあ足りないくらい、大好き。好きで好きでたまらないから、今のハルトを見てると悲しいんだ。

(なんでもっとはやく気付けなかったんだろう)









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