唇をかみ締める。


叫びたいのに叫べない。叫ばない。喉まで競りあがった感情をただ押し込めてかみ締める。行き場をなくした感情が目からぼたぼたと滴りおちるけど、生憎それを拭うことなんてしない。叫べない私の変わりに一生懸命叫んでくれるそれに少し感謝、と叫べない自分へ多大な嫌悪。ああ、それでも私は、私は、叫んでいるんだ。弧を描く口元は一向に開いてはくれないんだけれども。無言の叫びは頭の中にだけ響き渡る。


「聞こえているから、ね」


彼は矛盾だらけの私をみて緩く微笑んだ。



(幸せだと叫びたい)







幸せを知らなかった女の子





「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -