「やっぱり子供は三人くらいがちょうどいいかな?」 「…あなたはいったい何をしているんですか」 真っ白の紙に「子供は三人」と書き込めばフォクスが訝しげにこちらを見た。私の手元にある紙を見て、さらに眉間にしわを寄せた彼にえんぴつを手渡す。あ、またしわが増えた。 「だから、何をしているのか聞いているんです」 「何って、未来設計だよ」 「家は二階建て」えんぴつを走らせて贅沢のかぎりを書いていけば「随分と欲張りですね」なんて呆れられた。そういうフォクスは何も書かない。せっかく私がえんぴつを渡してあげたっていうのに、それはとんとんと点を打つだけで文字を書こうとしない。 「ほら、フォクスもなんか書きなって」 「こんなもの、叶うわけ無いじゃないですか」 「そんなの分かんないでしょ?一個くらい叶うかも」 ぐるぐる、とさっき打たれた点を塗りつぶすフォクス。肥大する黒が私の夢まで塗りつぶそうとしたとき、ふいにフォクスがえんぴつを止めた。 「それでは、私があなたの夢を書いてあげます」 名案だとでもいうようないい笑顔で、私のえんぴつを取ったフォクスは、私のまるっこい字とは違う、すらっとした字で一番上になにかを書き足した。ああ、なんだこんなことか。「そもそもこれが大前提の計画なんだけど」と言えば、以心伝心ですねとフォクスは綺麗に微笑んだ。 「フォクスと幸せな家庭を築く」 |