「あれ?宅配便なんて珍しいね」


「この前注文したんだ、」



にこにこ、とご機嫌な様子で荷物をテーブルに置いたフィディオ。見れば日本から送られてきたみたいだ。べりべりとさっそく開封作業に入ったフィディオに中身を問えば「雑誌だよ」と短く返された。



「雑誌って…フィディオ日本語分かるの?」


「君が分かるから問題ないだろ、あ、まさか読めないなんてことないよね」


「そりゃ母国語だから、さすがに読めるけど」




私が読めれば問題ないって、まさか私に朗読させる気なのか。心配する私をよそにフィディオが嬉嬉とした表情で雑誌を取り出した。表紙に印刷された女の人の笑顔に一瞬、呆気にとられたが雰囲気からして厭らしい本ではなさそうで安心した。ほっと胸を撫で下ろし、その雑誌の名前が目に映った瞬間、今度は自分の目を疑った。




「フィディオ、その雑誌…」



「ゼクシィ」



「名前は間違ってないけど、なんでゼクシィ?」



「え、日本では結婚するときにこれが必要なんでしょ」



「は?」


「え?」


二人して首を傾げる。それからフィディオが困ったように「俺の言いたいこと分からないかな?」と呟いて、頭を掻いた。いや、分からないわけじゃないけど、状況についていけないというか…なんか違うというか…



「俺と結婚してください」



はにかみながらゼクシィを差し出してくる彼はやはりどこか日本の文化を誤解しているみたいだ。










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