「ローラン暇だわ」


「ああそう、生憎僕は暇じゃないんだ」



本から視線をはずさず抑揚のない声でそう告げられれば胸がじくりと痛むのを感じた。さんさんと降り注ぐ日の光が眩しいのに私の心中は穏やかでない。だけどそんな素振りを見せればもっとローランは迷惑がるだろうし、私を慰めるのを面倒くさいと思うに違いない。





「ローラン…」



「うるさい」



「ちょっとくらい構ってよ」



「……」




じくりじくり、と痛みが広がる痛すぎて眼の前が霞んできた、これは重症だなぁ。テラスのテーブルに顔を突っ伏し零れそうな嗚咽を押し込めるように首を押さえこむ。苦しいな、苦しいよ。涙は袖に吸収されてじっとりと肌に張り付いてきて気持ち悪い。





「ねぇ、泣かれると鬱陶しいんだけど」




「ごめんなさい」



「謝られても困る」





ぱたん、と本を閉じる音と椅子を引く音が聞こえた。





「まったく、僕の気を引きたいならキスの一つでもしてごらんよ」





後ろから抱きすくめられて顔を上げれば呆れ顔をしたローランの顔が真横にあって吃驚した。おもむろに伸びてきた腕に乱暴に目元を擦られたおかげで瞼あたりがちょっと痛いや。でもさっきのじくりとした痛みとちがって暖かい





「ほらキスしてくれれば構ってあげる」






暖かな痛みに侵食された






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